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ジングルベルは雪と共に
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翌日。
何とも言えない光景が昼時なのに目の前に広がっている。
休日ということもあって寝坊を決め込んで10時に起きて外を確認すると雪は降っているのかいないのか微妙な具合だった。
先輩は雪が降っていたら出掛けないと言っていたので、お昼ご飯の時に起こしてあげようとひとりのんびりとDVDを観終えた頃。妙にドア外がやけに騒がしくて扉を開いたのが間違いだった。
ギャーギャーと騒がしい原因は2階にお住いの男子生徒の方々が右往左往大騒ぎしていたからなようで。中には他の階の人も紛れている気がするのは気のせいだろうか。
「おう!絵所!お前呑気にしてる場合じゃねーぞ!準備しろ!準備!」
「何の騒ぎですかー?」
「何ってお前、女子が来るかもしれないんだ!掃除だ!掃除!危ないもんは部屋に仕舞い込め!」
「危ないもんって何ですか……」
「そりゃあお前、女子の嫌いそうなもんだよ!」
騒ぐだけ騒いでろくな説明もしてくれない。部長……もうちょっと分かり易く事の説明してくださいよー……俺初めてなのに。あ、そうだ。
俺はすぐに騒がしい下界とおさらばして扉を閉め、天界という名の我が部屋へ戻った。
勿論、一目散に向かうのは先輩の部屋。コンコン、とノックしても先輩から返事はなかった。
特に気にすることもなく部屋に入ると、先輩はやっぱり布団にくるまって眠っていた。
先輩を起そうと入っていくと、珍しく机の引き出しが開いていた。こういうところはきっちりしているのに、勉強の途中で眠くなって寝落ちしてしまったのかな。
寝起きの悪い先輩が寝ぼけてぶつけてしまっては大変なので、静かに閉めた。
見るつもりはなかったのだけれど、引き出しの中は綺麗に整頓されていて先輩らしさが出ていて、綺麗に並んだ筆記用具には万年筆が混ざっていて、勉強で使っていそうなノートとか分厚い本とかがきっちり収まっていた。
「せーんぱい、昼です。一緒にご飯食べませんか?」
「んー……ミルクティ、だけ……頂きます」
もごもご、と布団の中でうごめく先輩。この人は放っておいたらいつまでも寝ていそうだ。
呆れて思わずため息が出た俺は、大人しく要望を飲もうと先輩の部屋から静かに退室した。
10分後。
二人分のミルクティとフレンチトーストをお皿に並べて用意し、先輩を布団から引きずり出した。
目の前で寝ぼけ眼でフレンチトーストを大人しく食べている姿に満足して俺も口にする。ふんわり甘い味が舌先から満たされてくる。
「外、みんな始めてますね」
甘味に浸っていると、先輩がぽつりと呟くので顔をそちらへ向けると、相変わらず騒がしい扉の方をぼんやりと見つめていた。
「危ないものは部屋に仕舞い込めって言ってましたよ」
「あーエロ本とかですね」
「あ。そういう意味だったんですか」
「ええ、みんなで回したものが共有スペースに放置されていたりしますから」
ずず、っとミルクティを澄ました顔で口に含む先輩は、興味がないと全身で言っているように感じ取れて俺はそれ以上質問することをやめた。
特に悪い空気になったわけでもないので、そのままゆっくりとした食事を二人で取った後、片付けをしていると先輩がソファに浅く腰掛けて天井を仰いでいるのが目に入った。
「先輩、この後どうするんですか」
「そうですね……夕方まで勉強して、2階のパーティに顔出します。絵所くんはどうされますか?」
ゆったりとした口調で話す先輩は色々と考え事をしているのか天井に視線を彷徨わせたまま返事をしてくれた。
のに。
俺は返事に困っていた、というよりそわそわしていた。いつもお世話になっている先輩にクリスマスプレゼントを渡すタイミングが昨日からわからないでいるのだ。
パーティで疲れてしまいそうだし、今も何となく違う気がして。最悪サンタさんのように枕元にこっそり置こうか。
「絵所くん?」
はっと我に返ると、目の前に先輩が立っていて思わず見上げると、不思議そうな顔をした先輩が俺の顔色を覗き込んでいた。
「あ!えっと!俺も!先輩と同じです!」
慌てて答えた返事をしてみたものの、内心先輩は何するって言ってたっけとかぐるぐる疑問が駆け巡っていた。そんな俺に気付いてなのかそうでないのか、先輩はじゃあお互いの勉強がひと段落したら一緒に参加しましょうか。と言ってくれたので、それに大きく頷いて了承した。
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