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マーブル模様の混ざり具合
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……よしくん。
……おーきて。
「んん……?」
何かが遠くで聞こえる。
靄がかかったゆらゆら揺れる世界はゆりかごみたい。
ゆっくりと意識が現実に戻ってくると、目の前にドアップの阿野がいた。
「うお!?なに!?なんで俺の布団は…むぐぅ!!!!」
「しー。今からいいとこ行こう」
俺の布団に潜り込んできた阿野は、布団を頭まで被せていて。二人の体温で包まれた空間の中で驚いて騒ぎだす俺の口を掌で封じた。
唸って抗議する俺に人差し指で沈黙を促して悪戯に笑う。これ、ろくなこと考えてないときの顔だ。
けれど、楽しいお誘いだと俺は知っていた。
だから、俺は素直に頷いた。
「わ……なにこれ、すっげー!」
先生たちが見事に寝静まった深夜、俺たちはこっそり抜け出して裏庭に来ていた。
大した距離でないのに、そこから見上げる空は綺麗に澄んでいて、星が自分を囲うように広がっていた。
「噂で聞いてねー?ここすっごく星が綺麗に見える場所なんだってー」
喜ぶ俺に満足そうに自慢する阿野はちゃっかりベンチに座っていた。俺も隣りに腰かけて、なんとなく、本当になんとなく、先輩にメールをしてしまった。
【京都は星がすごく綺麗です!】
寝ているだろう先輩になぜ送ってしまったのかわからないけれど、この綺麗な星を見たら、脳内には先輩しか思い浮かばなかった。
黙ってチラリチラリと煌めく無数の星を眺めること数分、急に携帯が震えた。ディスプレイには先輩の名前で、メールの返事が返ってきた。
【こちらも今日は綺麗に見えますよ】
同じ空を別の場所から見上げていることが妙に嬉しくてにんまりしていると、添付画像が付いてきていることに気が付いた。
珍しいことなので誤送かと内容を確認すると、そこには逃げようとしている先輩とにっこりと綺麗な笑顔で先輩と強制的に2ショットを撮ろうとしている扇田先輩がデータ受信された。
なにこれ。扇田先輩と星見てるんだ。あの丘に一緒にいるんだ、そっか。
ちりりっと胸が焼ける。なんだろう、この痛み。
連続で送信されてきたメールには、抜け出して来たのかというお説教フラグな内容が打ち込まれていたが、自分だって門限破りじゃないかとモヤモヤとした気持ちが先走って、初めて先輩からのメールを無視して携帯をしまった。
「バレる前に帰ろう」
百面相をしていたらしい俺を隣りで心配そうに見ていた阿野にふて腐れて無理やり連行を促すと、阿野は何も言わずに笑顔を返した。
「そうだね、帰ろっか!綺麗だったねー!」
ひょいと立ち上がって夜空に両手を広げる阿野とは対照的にもう星を見る気になれなくて生返事だけ返した。
星はすごく綺麗だった。感動的だった、でも、どうしてか今はぐるぐると胃の中をまわる感覚しか生まれない。
同室のふたりを起さないようにそっと戻って、静かに布団に潜り込んだけれど素直に眠ることが出来なくて布団を頭まで被ってぎゅうと力いっぱい縮こまった。
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