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春 恋の芽生え
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ピンクに黄色に白にオレンジ、これでもかとその人に不釣り合いなくらい幸せに満ちた温かく明るい色彩はあるものを示していた。
これは、恋の色だ。
特別な、色。
ここにあるじゃないか、特別な、好きが。
握りしめた筆をそのまま放り投げてカンバスを抱えて教室を飛び出した。この絵を見せたくて、これが俺の深層心理だから。まだ乾いていないカンバスが手から滑り落ちるたびに転びそうになって、それを抱えなおして尚も走る。
先輩、先輩、先輩!
俺、気付いた!先輩の事が好きだって。
男とか女とかで固執して考えてたからわからなかった、どうしてこんなに時間がかかったんだろう、もうずっとずっと前から想ってたんじゃないか。
だから今、今すぐ。
会いたい、顔が見たい!いつもの困った顔でいいよ、その顔でいい、むしろその顔ですら愛おしいんです、先輩。きっと俺だけの特別な顔じゃないと思う、それでもその顔を一番沢山見れてるのは俺でしょう?
今この瞬間のこの新鮮な気持ちをね、先輩に伝えたい!だから、聞いてくれますか、先輩の事だからこんなバカげたこと困った顔で返事をくれないかもしれない、それでも。
無我夢中で走り抜けてきた寮の部屋の前、部屋の鍵がこんな時に限ってすぐに出てきてくれない。
慌ててポケットから引っ張り出した鍵を握る手も、そのまま出てきてしまった初めて脱ぎ散らかした上靴も、全部全部。この全部が先輩に向かってる気持ちのせいだと思うと鼓動が高まるんです。
走った動悸ですか、それとも先輩を想う高揚ですか、先輩、教えてください。恋を、教えてくれた先輩、俺のこの気持ちに名前を付けてくれた先輩、先輩、先輩……!
「先輩!」
肩で息をして勢いよく部屋の扉をノックも忘れて飛び込むと、予想通り先輩は驚いた顔をしてた。でも、それでいい、それは予想できてた。
脇に抱えてきてた、もう多少自分の手で崩れてしまった先輩の似顔絵を目の前に掲げてこれでもかと大きな声で叫んだ。
この気持ちが伝わるように、先輩の元に届くように、力いっぱい。
「俺……っ!先輩が好きです!先輩の事が好きだって気付いちゃいました!」
緊張で先輩の顔が見れない。
先輩、どんな顔してますか、俺はきっと今真っ赤です。
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