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文化祭
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俺の占いは当たっているのかいないのかは別として、順調に当番をこなしていて、もう後ひとりくらいで交代、というタイミング。それは俺にとって予想外の来客だった。
「扇田先輩……」
「手相見てくれるんです?」
「どうぞ……」
対面の椅子へと促すと楽しそうに周囲を見渡して、そわそわとしながら腰かける姿は華奢そのもの。発育過程の俺よりも脆そうな肩が嫌に目につく。
何となく視線を外してひとつ息をつくと、いそいそと両手を差し出す扇田先輩は相変わらずニコニコと微笑んでいるから厄介だと思ってしまう。
「あ、恋愛運でお願いします」
小首を傾げて両手を見易いように広げる姿は、もしかしたら男でも見惚れてしまうかもしれない。女子がこれをみたら黄色い声があがるんじゃないかな。先輩の向けてくる期待の眼差しが痛いし、内容も正直いいものが出なかったらいいのにとか思えてしまうから本当に性格が悪いよ、俺。
控えめに先輩の手を取って見てみると、勉強した通りだととても一途な人らしい。
「一途、に想う人だと、思います。あまり考えすぎると上手くいかない、って出てます」
「ふむふむ。割と強引でもいいんです?」
「そこはちょっとわからないですけど……気持ちに素直になっても、いいみたいです」
「ほう、ありがとうございます。前向きに頑張ってみようかな」
誰に対して前向きになるんですか。
自分の両手をしげしげと見つめる先輩にそんなことを聞けるわけもなく、ぺこりと小さく頭を下げると、先輩は満足そうにお礼を言ってくれた。
「哲君のところに行くんです?僕も今から行くところなので良ければ一緒に行きませんか?」
「あ、えっと、はい」
これこそ断る理由なんて見つからず、早く阿野が帰ってくればいいのに。と物凄く強く念じたのが功を奏したのか廊下の方から呑気で大きな声が聞こえてきた。
これぞ天の助け!と振り向くと、脹脛まで裾が長く垂れたハッピを羽織って、半袖を肩まで捲り上げている勇ましい阿野がいた。おお、髪もバリバリのオールバックだ。
「よーしくーん!どうして俺の雄姿を見に来てくれなかったのー!?」
「当番だって言ったでしょ!」
室内に入ってくるなり暑っ苦しい阿野に上から伸し掛かられて潰れそうな俺は怒号をあげるが、そんなの全く気にもせずに阿野はいやんいやんと人の上で騒いでいる。周囲はいつものことだとクスクス笑って誰も助けてくれなどしない。そんな中、意外な人が手助けをしてくれた。
「こんにちは、僕も一緒に行ってもいいかな?」
「あ、扇田先輩!もっちろーん!一緒に行きましょ!」
まだ椅子に腰かけたままの先輩は机に肘をついて両手を組んだ上に顎を乗せて、にっこりと微笑んでいる。そんな先輩に今更気が付いた阿野は飼い主を見つけた犬みたいに喜んで賛同している。
なんかあれだけ懇願した阿野が全然助け船になっていない気がする。
俺は密かにため息を漏らした。
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