アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
文化祭
-
「いたいたーこんにちは、写真部ですー依頼写真お願いできますか?」
腰をあげようとしたのをタイミングよく遮ったのはひょっこりと顔を出した池ちんだった。
え、嘘。本人目の前にして撮るつもりなの?
バレるんじゃないかと一瞬硬直すると、池ちんは何故か俺にカメラのレンズを向けている。
「え?俺?」
「うん、よしくんに8枚、星屋先輩に12枚の依頼が来ていますのでご協力お願いします。あと、ツーショットも2枚分お願いします」
にっこりと微笑んでいつもの口調でゆったりと説明する内容に驚愕した。俺以外に11人もライバルがいる!しかも2ショットとか誰が頼んだの!?俺が口をパクパクさせていると、同じように哲さんも驚きを隠せないようだった。
「そんな顔じゃ信頼なくなっちゃいますよー笑顔でお願いしまーす」
強制的に取られたソロショットは緊張したものの、レンズの向こうが池ちんだったということもあってか池ちん曰くいい顔だよ、と褒めてもらえるものになったらしい。哲さんも複雑な表情と困ったさんな顔で微笑んでいた。俺、その顔嫌いなんだけどな……
「はいはい、ではではー寄り添って……ああっと、星屋先輩。よしくんの肩組んで貰っていいですか?可愛い後輩と仲良し~みたいな感じが欲しいです」
ぼんやりと哲さんを見ていると頬に手を当ててうーんとひと唸りした池ちんがとんでもないことを言い出した。ちょっと待って、誰のお願いなの本当に!教えて!俺が欲しいよこれ!この状況はありがたいけど!
心の叫びなんて誰も聞いているわけもなく、とんとん拍子で決まっていく内容。哲さんも早く終わらせたい気持ちがあるのかもしれない、素直に頷いている。そもそも俺たちに依頼写真への拒否権はないのだけれど……。
くい、と引き寄せられた肩の反動でよろけて哲さんの首に頭がぶつかった。恥ずかしい!一瞬で火を噴きそうなくらいに顔が熱くなると、池ちんがにっこりと策士な微笑みを浮かべていた。これはありがとうと言うべきなのか、どうなのか。なんとも言えない気持ちでいると、池ちんは笑ってくださいね~とゆるい口調で合図を出す。笑えるわけがない……!
「絵所君、この状況で苦しんでいるのは君だけではありませんからね」
不意に頭上から聞こえた声に顔をあげると、至近距離だから哲さんも照れているんだということがよくわかった。顔もほんのり紅いし、耳も心なしか染まってる気がする。しかも、今言った。
「ペナルティですよ」
「え?……あ。今のはなしにしましょうよー」
「やですよ~ダメです、一回は一回」
「……もう、相変わらずちゃっかりしてますね」
「そりゃもう先輩のご指導の賜物でーす」
「よく言いますよ」
「はーい、いい顔いただきましたーご協力ありがとうございました」
「「え」」
ガチャガチャとやり取りをしていたら、知らない間に撮影は終わっていたらしく妙に満足気な笑顔を浮かべる池ちんは哲さんによくお礼を言って頭を下げて感謝を示していて。それを終えると俺の横に来てそっと耳打ちをした。
「2ショット、よしくんの為のものだからね、楽しみにしてて」
にこりと綺麗って言葉がぴったりな笑顔を俺に向けて池ちんはまた別の人に声を掛けに行った。あの策士め、やっぱり企みだったんだ。てことは、2ショット2枚ってのはフェイクか、池ちん天才過ぎて言葉も出ないよ。
「行きましょうか、人気者さん」
「俺より依頼が多い人に言われたくないですよ」
池ちんとのやり取りに明らかに疑問を抱いていそうな表情をしていたけれど、これだけは絶対に言えません、ごめんなさい哲さん。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 65