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嫉妬と優しさ、優しさと嫉妬
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物珍しいものを見る目、視線、視線、視線。
大きな資材を抱えて高等部の校舎をパタパタと横切る。
哲さんの顔が見れたらいいな、と期待している俺がいて、雑用と言う名の担任の頼まれ事にも快く引き受けた。
のに。
目の前に飛び込んできた光景は、あまりに残酷で理解できなかった。
人気のない資料室、少し埃の感じる狭くそんなに明るくない部屋。その奥で身を寄せ合う二人の男子生徒の影。
少しだけ開いていた扉を肩で押しのけて入ったことが間違いだった、横着をせずにノックのひとつでもすれば見ずにすんだのかもしれない。
俺の背中から差し込む光で、俺の影が伸びる。その光と影は、奥の人物を俺に特定させて、嫌味なまでに認識させる。
相手の胸に収まっている人は、手の甲を顔に当てていて顔は見えないけれど、あれは扇田先輩に違いない。
その扇田先輩の頭を抱きかかえるようにしているのは、哲さんだ。
どうして、そんな状況になっているんですか。
扇田先輩は泣いていますよね。それは哲さんが原因ですか、それとも、何か別のことですか。だとしても。
抱きしめてあげる必要は、どこにありますか。
入ってきた光に咄嗟に反応したのは哲さんで、扇田先輩が此方に見えないように自分の後ろに隠した。そして、目を細めて此方を見るんだ。
あ。と、いう顔で固まってしまいますよね。
この状況がよくわからなくてもショックだったとか、そんなことは勿論だけど、何よりも哲さんの反応がショックだった。
固まった表情がゆっくりと通常に戻っていくのがスローモーションに見えたのに、その後は本当に時が止まった気がした。哲さんが……
見られたのが俺で良かったと言いたそうな顔をしたから。
もしかしたら、扇田先輩と哲さんは付き合っているのかもしれない。だから俺のしつこいまでの告白に曖昧な返事しかできなかったのかもしれない。
哲さんはきっと、男しか愛せないから、それがわかってしまったから、わかってしまうくらいには哲さんばかりを見続けてきたから。
でも、だからこそわかる。色んなことの辻褄が合うけれど、扇田先輩とは付き合っていないって。これは願望のフィルターかもしれない。そうじゃないって思いたいだけなのかもしれない。
そう思える自信もあるのに、俺はその場から逃げだした。
もう、それ以上見たくなくて、辛くて、心臓が痛くて、その痛さがどうしようもなくて、がむしゃらに走った。
「はぁ、はぁ……ごほっ、はぁ……あ、資材……あーもう」
息が続かなくて肺に呼吸を取り込めない苦しさに負けて足を止めると、手には何も持っていなくて、取ってこなくてはいけなかった代わりの資材も忘れて中等部に戻って来てしまったことに漸く気が付いた。
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