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シリウス
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定位置の小高い丘の上は哲さんの秘密の場所。
日が落ちればすっかり寒さに身が震える季節だからか哲さんはもこもこしていた。俺は寒さにめっぽう強いから首に巻いたマフラーが暑いくらいなのに、哲さんの鼻先はすでに赤く染まっていた。
そんな哲さんが、元気に育った柔らかい芝生の上に遠慮なくごろりと寝ころぶ様子は、普段あんなに部屋を綺麗にしている人とは思えなくて少しだけおかしくて笑ってしまう。
「いつまでそこにいるつもりですか?はい、此方へどうぞ」
頭を手向けて此方を見る姿さえもかっこいいと思えてしまうから、俺のフィルターはもうどうかしてるのかもしれない。好きで、好きで、堪らないんです。
哲さんに習って呼ばれた場所に素直に一緒になってころりと並ぶと、視界いっぱいに星空が広がった。前に連れてきて貰ったときも思ってけれど、ここは本当に天然プラネタリウムみたいだ。
「じゃあ、今日も星の観察といきましょうか」
片腕を後頭部にまわして枕代わりにして夜空を見上げる哲さんの言葉で、二人だけの観測会が始まる。こうしてまた連れてきてくれると思わなかった。だから本当に嬉しくて、舞い上がっていたんだ。
「んーっとね、あれがいい。あの星が綺麗で好き」
夜になるとまだ涼しさを感じる入学して間もない春先に連れてきてもらったとき、どうして星が見えて、とかを哲さんが詳しく教えてくれたことをきっかけに、夜になると気にして空を見上げていた。その中でも一番気になっていたやつを、いつか哲さんに詳しく教えて貰おうと心の片隅に置いていて。
今日誘われたときにそれを聞こうと決めていたから、質問は本当にすんなりと出てきて、顔の上に真っ直ぐ腕を伸ばして指定の星を指さした。
「どれですか?」
俺が指示した星が哲さんからの視点ではわからなかたようで、近くに寄るどころか顔を寄せてきて、俺の指先に自分の腕も寄せてくる。
「あ……あれ、一番光ってるやつ」
人差し指が並んで、俺より大きな手も腕も、俺よりも先へと伸びてその位置を探す。自然と近寄るその距離に少しだけ手が震えた、その時。
トン、と手が触れる。
ぴくっと肩が揺れたのが、自分なのか哲さんなのかわからなかった。急に無言になった空間の中にふうと少し声が漏れると白いものが少し伸びていくのが見えた。顔を動かす勇気がなくてちらりと視線を向けると、腕越しに視線がぶつかった。
暫くの間見つめあっていると、トクントクンと心音が耳に煩く響く。
それに耐えきれなくてパッと視線を逸らすと、クスクスと小さく笑う声が聞こえる。それすらもちょっと恥ずかしくてマフラーを指先で引っ張って顔を埋め込むと哲さんは腕を下ろしてその腕をまた枕代わりにした。
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