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3月20日
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見ないふりをした春の日の事。
彼が僕の絵を描きました。
それはあの子にとって無意識の産物で、そこには春の花畑のような色合いが溢れていて、僕は驚きで目が離せませんでした。
そこには、僕の泣いた顔が描いてあったのです。
僕は彼の前で泣いたことがありませんし、此処に来てから泣いたこともありません。
それなのに、彼は僕の泣いた顔を見たことがあるかのようにしっかりと描いていました。
指でなぞった様な跡で所々わからなくなっていましたが、しっかりと涙の辿る線が白く輝いているように描いてあったことだけはわかりました。
彼には、僕がそう映って見えるのでしょうか。
その春風が舞い込みそうな色と、僕の泣き顔は不釣り合いなはずなのに、どうしてか彼の気持ちがはっきりと浮き彫りになって見えて胸が鳴るんです。
その音が煩くて怖いから、僕は怖気づいてそこから視線を外しました。
いつかこのことが気付かれてしまわないように、気を付けなくては。と思うばかりです。
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