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秋、萌ゆる頃
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捲るたびに見えてくる哲さんの隠し事。
俺が毎日毎日しつこく付き纏ってたことも微笑ましいってちゃんと書いてくれてて、日に日に俺の事が増えてることが嬉しくて堪らない。
だけど、いつもその気持ちを伏せて殺さないといけないって書いてある。
それが胸をぎゅうと締め付ける。
これは悲しい、という感情を名付けていいんだろうか。
全てを読み切るまでに随分と時間がかかったのかもしれない、窓から差し込む光が橙色で、西の空にゆっくりと沈もうとしてて顔が半分もぐっている。
5月の5日と6日は空白だった。
毎日欠かさずに綺麗に書いているこの日記に、この日だけページごと破り捨てられている。その日だけ必ず、必ず。
哲さんのご実家はここからそう遠くないところで外泊許可を取っていたし、ゴールデンウィークだから帰還しているものだと思ってた。違ったんですね、5月はいつも体調が悪そうで沈んでいるのは季節の変わり目に弱いからって言っていたじゃないですか。
ああ、もう寒がりな先輩が体調を崩しやすい季節ですよ、ちゃんと温かくしていますか。イギリスって9月から学校始まるんだしたっけ?寒いのかな、気候ってどうなんだろう、乾燥してないといいな。
そっか、だから今というときを選んで扇田先輩に届けて貰ったんですね、哲さんらしいや。
ゆっくりと閉じた本は大切に愛用していたのがよくわかる丁度良い古び加減で、厚さもしっかりあるからハードカバーの洋書のよう。
表紙をゆっくりと撫でているだけで喉がぐっと詰まる。
「あー!いたいたー!もー何してるのー教室で待って、た……どうした?」
元気を身体で表したような友人がTシャツにハーフパンツ姿でバスケットボールを脇に抱えて現れた。
さっきも思ってたけどもう9月だよ、寒くないの?あれ、そういえば部活が終わるの教室で待ってる約束してたっけ、ごめんね忘れてた。
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