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re/cou/p
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俺が目を覚ましたのは朝の8時過ぎ。
外を見ると雨が降っていた。
雲の中で照る太陽が、白い壁を絵の具で濁り切った水のような灰色で塗りつぶす。
その景色が妙に心を震わせて、怖くなった。
目の前のセンラに手を伸ばす。
この愛おしい人は俺のものにはならない。
してはいけない。
そんなことはわかっている。
でも、会えなかった時間、いや、会わなかった時間が、俺の気持ちを膨張させているのは確かだった。
昨晩涙で濡らした黒くて長い睫毛が綺麗だ。
そんなことを思いながら彼の顔を見ていた。
すると、
せ「──」
センラは寝言を言った。
一体何を言ったのかはわからない。
綺麗な睫毛を伝ってまた涙が出た。
なのに口元は微笑んでいる。
それが俺には愛おしくてたまらなかった。
誰の夢を見ているのかなんてわからない。
俺の夢だったらいいのになんて、自分勝手なことを考えた。
あの時別れないと、なんて思ったのは無駄だった。
だってセンラはセンラだから。
どんなに心を変えようとしても、こいつはこいつのままで、こいつが好きな俺は変われない。
すると、幸せな俺を現実に引き戻すように、携帯の着信音がなった。
まさか・・・
画面を見るとあの女の番号が表示されていた。
取らないことも考えた。
だが、経験上こいつの電話を1度無視するともっと酷いことが待っているのは目に見えている。
実際やった事があるのだ。
し「・・・もしもし?」
女「あー!しまくーん?」
し「・・・何?」
女「ごめんねー?」
せ「何が?」
くすくすと笑いながら適当な謝罪をする女。
細くて白い肩を揺らしているのが目に浮かぶ。
女「君らのこと、女友達に話しちゃった♡」
し「は・・・?」
女「いやー話せってしつこくってさー・・・」
し「死ね・・・死ね死ね死ね!!!!!」
女「もぉーそんな怒んないでよー」
し「何のつもりやねん!!これは何の電話?なあ、謝罪か?違うよなあ?こんなクソみたいなトーンでする内容じゃないよな?」
女「お詫びにさあ、しない?」
つくづく頭がおかしいと思う。
いつ、この関係を終わらそうかと思っていた。
それは今日だ。
もう我慢できない。
この女の携帯を叩き割ってやろう。
何もかも、全部消してやる。
し「・・・・・・お前今どこ?」
女「お!珍しい乗り気じゃん!今ねー駅前のカフェにいるよ♡」
し「そこにいろ。迎えに行ってやるよ。」
女「やったー!!」
その声を聞き届けて直ぐに電話を切った。
こんな話をした後で見るセンラの横顔は辛かった。
俺のせいで俺達の関係が世間にばらまかれることになったことへの謝罪、まだ残る呑気な愛情、あの女への怒り。
どんな風に見ればいい?
もう一度あの女に会う選択をした俺を彼は許してくれるだろうか?
俺は針だらけの心の処置を望んだ。
跡が残るように、
痛みが残るように。
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