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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ22
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結局大学までの道を走りきった雪見は門の前で足を止め、一言礼を言うと構内へ消えていった。
「………生きてるか?」
肩で息をしてへたり込んでいる隣のやつに投げ掛ければ、言葉はなくコクコクと頷きが返ってきただけ。
「大学の中までは入れない。向こうのカフェで時間を潰す。」
と指したのは昨日も使ったカフェ。
見る限り今日も混雑はしていないようだ。
はい……と弱々しい返答がして、カフェへ向かう。
雪見は講義が午前で終わると言っていたから、
それまで時間を潰させてもらおう。
中に入ると昨日と同じ店員が俺達を迎える。
黒く長い髪を後ろに束ねて、柔らかな笑みを浮かべた女性だ。
女性は俺の顔を見て、何かに気付いたような笑みを見せた。
「いらっしゃいませ、また来てくださったんですね。」
どうやら俺の顔を覚えていたらしい。
不特定多数の客を相手によく覚えていられるもんだと感心した。
「今日はお連れ様もいらっしゃるんですね。奥の席へどうぞ。」
案内されたのは窓際の奥。
大学の門が見えるので申し分ない席だ。
俺は珈琲を立花は紅茶を注文して一息つく。
「し、死ぬかと思いました……」
立花はそう言ってテーブルに突っ伏した。
「運動不足でしょうか?体力が落ちたような……」
ぶつぶつと呟く姿に思わず笑ってしまった。
「あ、今笑いましたね?僕は真剣に落ち込んでるんですよ。」
「ふっ……家にばかりいるからだ。」
「そうは言いますけどね、家事だって体力消耗するんですからね!」
立花は不服だと口を尖らせた。
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