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CAGE3:少年の記憶と過ち19
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そろそろ本題に入ろうと上月へと振り返る。
「それで、呼び出した理由は?」
「そうそう、君が預かってくれている暁斗くんについての情報が分かったらしいから、一緒に聞いてもらおうと思ってね。」
それは随分と早い対応だ。
紅、曰く、名前さえ分かれば情報収集は容易いらしい。
そんなもんなのか?と理解しかねるが、そこは俺の専門外だ。深い詮索は必要ない。
「てことで蒼くん、報告よろしく。」
上月に言われ、報告資料でも読み上げるのかと思いきや、蒼はそのまま何も見ることなく口を開く。
「楠木 暁斗(クスノキ アキト)、11歳。兄弟はなく、母親は3年前に死亡している。死因は過度なストレスが原因のようだ。現在、父親と二人暮らしだが、学校へは登校していない。学校側へは本人が行きたくないと言っていると言う話になっているようだ。不登校扱いになっているが現実は違う。」
一度言葉を切って、蒼は俺へと視線を投げた。
「事実は父親が監禁、虐待を繰り返している。」
細められた目が何を語っているのかは分からない。
写るのは哀色だ。
互いの姿が瞳に写って数秒、蒼はまた興味を無くしたように視線を外した。
「それから父親が捜索願いを出している。警察が探し回っているから、匿う気なら注意するんだな。」
「……随分な勇気だな。自分が虐待しておいて捜索願いを出すなんて。」
「大人は子供に聞く耳を持たない。大人は大人の言葉を信じる。だからいくらでも言いくるめられる。自信の現れだ。」
コイツの言っていることは間違いじゃない。
傷だらけで見つかっても、居なくなった間に何かが起きたのだと泣き崩れ、やり過ごすつもりなんだ。
人間の思考は深い、それゆえ浅い。
矛盾の波は大人だから、子供だからと簡単に片付けられていく。
「巻き込まれたくないなら、さっさと捨てるんだな。」
「蒼兄さん……」
「俺達の仕事はここまでだ。」
蒼は上月の手にあらかじめ用意されていた茶封筒を奪い、俺の背中にある出口へと紅を連れ立って歩みを進めていく。
「……捨てはしない。助けるさ。」
そう言えば俺の横で足を止め、チラッとこちらを見た。
「……それが仕事だ。」
「せいぜい被害が飛び火しないように気を付けるんだな。」
そのまま横切っていく背中を、紅は一つお辞儀をして追いかけていく。
パタンとドアが閉まる音がして、部屋は静まり返った。
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