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CAGE3:少年の記憶と過ち20
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沈黙を破ったのはやっぱり上月で、その顔はにこにこと笑っている。
「あの子の依頼、受けてくれるのかな?」
「……ああ。」
「さすが優秀な従業員だ。ね、啓介?」
それまでずっと黙っていた葉桜は重たい溜め息をついた。
「全く……あの兄弟が他人との接触を嫌うことを知っていて、なぜわざわざ引き合わせるんですか。」
「荒治療だよ。」
「本音は?」
「面白い!」
葉桜はまたしても深い溜め息をついた。
「いいじゃないか。倉橋くんにしろ、あの兄弟にしろ君達はもっと他人と関わりを持つべきだ。ね?」
首を傾げた先は俺で、おまけにウィンクなんかも飛ばしてくるものだから寒気が走る。
「……必要ない。」
「そんなことないよ。人は一人では生きていけないからね。君は周りに生かされ、君もまた周りを生かしてる。頭のいい倉橋くんなら分かっているだろうけどね。ただ、認めたがらないだろうけど。」
返すこと言葉が見つからなかった。
そんな俺の心境も悟ってこの男は笑っているんだ。
本当、侮れない奴だ。
「用が済んだなら俺も帰る。」
と踵を返す。
特段引き留める声もないので、そのまま事務所を出ようとドアノブに手をかけたとき、ふとあることが頭を掠めた。
少し思案して、上月を振り返る。
「……訊きたいことがある。」
「ん?何かな?」
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