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CAGE3:少年の記憶と過ち22
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シャワーのお湯を浴びると、全身の傷が傷んだ。
切り傷、打撲、煙草の痕、火傷……
新しいものから古いものまで勢揃いだ。
鏡に写る姿は汚ならしく思えた。
「……汚い、よな。」
一人心地に呟いた声が、やたら大きく浴室に響き、耳に届く。
届いた言葉を振り払うように頭を振りかぶった。
傷を庇いながら浴びていたら、かなり時間が掛かってしまった。
浴室から出ると服が用意してあって、それに腕を通す。
二人のどちらかのTシャツなんだろうけど、俺が着るとぶかぶかでズボンが要らないぐらいだ。袖だって余ってる。
二人とも身長高いもんなぁ……。
ちょっと悔しい……。
リビングに戻ると洋兄が既に帰宅していて、ダイニングに腰かけていた。手には本があって読書に夢中のようだ。
直兄はキッチンから料理を運んでいた最中で、俺の姿に気が付くと微笑んで近付いてくる。
「怪我、痛みませんでしたか?」
「うん、大丈夫。」
「あとで傷の具合見せてくださいね。」
それから、と直兄は俺の耳に口を寄せる。
「倉橋さんを呼んでみてあげてください。」
直兄は悪戯っ子の笑みとウィンクをして、俺の肩に手を乗せた。
俺は意を決して口を開く。
「あ、あの……」
「ん?」
洋兄は本から視線を上げず、俺の声に反応する。
「おかえりなさい、洋兄…」
名前のところだけ声が小さくなってしまったのは、意図したわけではない。
自然となってしまった。
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