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CAGE3:少年の記憶と過ち39
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笠見side
「失礼します。」
もう一押しかと思ったが、案外頑丈な精神力だ。
立花 直は駆けて去っていく。
「笠見さん、彼を知っているんですか?それから、何でしたっけ?倉橋 洋?」
「立花 直は資料で読んだ情報程度だ。」
年下の情けない後輩、藤堂は不思議そうに私を見つめた。
まあ、あの事件も藤堂が入社する前の話だ。
知らないのも無理はない。
「倉橋 洋は10年前、私が逮捕した男だ。当時はまだ少年だった。少年院から出所したとは聞いていたが、こんなに早く再会することになるとは。」
「はぁ……」
「時期同じくして、あの立花 直も少年院に入っていた。二人とも同じ罪を背負ってね。」
立花が立ち去った方向へ私達も足を進める。
「“親殺し”それが彼らに課せられた罪。」
隣を歩く藤堂は目を丸くした。
「さっきの彼もですか?」
「そうだ。」
「そんな風には見えなかったけどなぁ。」
この男は……。
「藤堂、警察がそんなことでどうする。人は見かけによらない。」
「は、はい!」
「全く………。まぁ、それでもあの二人には情状酌量の余地が働いたんだろうがな。」
「え?」
「じゃなきゃ10年足らずで出てこれまい。立花 直の方は知らないが、倉橋 洋は両親から暴力、性的虐待を受けていた。」
「両親からですか?」
「…倉橋は母親を殺害した。父親は逃走して行方知れず、未だ捕まっていない。」
10年前……
まだ新米だった私が初めて逮捕した少年の姿を今でも忘れない。
全身おびただしい血を浴びながら、ただ色のない瞳で立ち尽くすあの姿。
呼び掛けには応えず、抵抗もしなかった。
ただ小さな声で、
“守れなかった……あと、少しだったのに…”
と呟いていたのを覚えている。
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