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CAGE3:少年の記憶と過ち46
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直 side
乗り込んだのはパトカーではなく、思いの外普通の車だった。
藤堂さんの私用車らしい。
何でも周辺調査にパトカーは目立ちすぎて不向きだと言うこと。
運転は藤堂さん、助手席には笠見さん、それから僕ら二人は後部座席。
車内は無言だった。
チラリとバックミラー越しに笠見さんと目があった。
「君も少年院に入っていたんだよね?」
「え……はい……」
「君たち二人は少年院にいた頃から仲が良かったの?」
「…いえ、そういう訳では……」
むしろあの頃は関わりがなかったに等しい。
顔は知っている、ぐらいのレベルだった。
「そう。それなら尚更気になるわ。どうして君たち二人が今、一緒にいるのか。」
答えに戸惑っていたら、隣の倉橋さんが僕の手を握った。
「アンタには関係のないことだ。余計な詮索はするな。」
「ただの興味本位だよ。幼い頃に罪を犯した人間同士、どんな心境で身を寄せあっているのか、のね。特に君達は“親殺し”という同じ罪を背負った者同士だ。」
“親殺し”その言葉を聞くと、未だに後悔の念が押し寄せてくる。
思わず力の入ってしまった手を、倉橋さんが握り返してくれる。
「普通の暮らしをしたいと、ただそれだけを思っている。静かに暮らそうとしているだけだ。……普通を願って何が悪い。」
「別に悪いだなんて思ってない。そんなにピリピリしなくても良い。」
再び車内は静けさを取り戻した。
それから少しして車が停まった。
「この家です。」
運転していた藤堂さんは車の横の一軒家を指した。
僕らが車を降りたとき、
「ぁぁぁああああああああああああああ」
と言う悲鳴にも似た叫び声がこだました。
一番最初に駆け出したのは倉橋さんだった。
「あ、待ってください。」
その背中を追いかけ、僕らも走る。
ドアに鍵が掛かっていたようで、倉橋さんはそれを蹴破っていく。
玄関を抜けて突き当たりに見えたドアを開け、中へ入った瞬間、目の前に広がった光景に僕は一瞬言葉を失ってしまった。
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