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CAGE3:少年の記憶と過ち50
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洋side
「全くどうして君はーー」
何でも屋の事務所の扉を開けると上月が頭を抱え、呆れた様子で呟いていた。
その相手は城峯 蒼。傍らには紅の姿もある。
俺達が入ってきたことに気が付いて上月は驚いた顔をし、蒼は無表情でこっちを振り返る。
俺は上月には目もくれず、ただこちらを見る蒼に近付き、その胸ぐらを掴んだ。
「………何?」
「……警察と楠木暁斗の父親に情報を流したのはアンタだな?」
上月の制する声が聞こえた気がしたが今はどうでもいい。
「………」
「……答えないってことは肯定と捉えるぞ。」
「好きにすればいい。」
「どうして情報なんか流した?命に関わる仕事は受けない、それがルールのはずだ。情報が漏れたらどうなるかぐらい想像ついただろう。」
俺の問いに蒼は鼻で笑った。
「どうしてだって?俺は何でも屋である前に情報屋だ。金を積まれれば仕事をするのは当然だ。それに命に関わる仕事は受けない、なんてのはコイツの勝手な方針だ。俺には関係ないね。」
コイツと言って指したのは呆れた顔をした上月だ。
「ふざけーー」
「ーー勘違いすんなよ。俺はあくまで情報屋であって直接手を下した訳じゃない。自分の無力さを人のせいにするな。」
口振りから暁斗が父親を刺したことをもう知っているんだろう。
伊達に情報屋なんて名乗ってないってことだ。
「それに俺はお前達の味方って訳じゃないしな。」
パシッと乾いた音がして胸ぐらを掴んでいた手を振り払われる。
「紅、帰るぞ。」
「あ、蒼兄さん待ってよ。」
俺の横すり抜けようとして、蒼は足を止めた。
「ああ、そうだ。一つだけ教えておいてやる。俺は警察にも楠木暁斗の父親にも情報は投げちゃいない。」
「…………?」
蒼はニヤリと笑い俺の肩に手をかけると、ソッと耳に口を寄せた。
「俺が情報を売ったのは倉橋 春伊(クラハシ ハルイ)と言う男だ。」
囁くように言葉を残し、蒼は去っていく。
俺はその場に立ち尽くしたまま動けないでいた。
倉橋 春伊……
ひどく懐かしい名前だ。
心が急激にざわついていく。
ドクドクと心音が速くなる。
倉橋 春伊それは紛れもない、俺を作った男……
ーー父親の名前だ。
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