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CAGE3:少年の記憶と過ち51
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目の前の景色が遠く見える。
蘇るのは生まれたときからの記憶だ。
「ーーん、ーーさん!」
声がした。
心地いい声だ。
「ーー倉橋さん!」
強い揺さぶりとクリアな声に、急に現実に引き戻る。
「大丈夫ですか?急にボーッとしてしまったから…」
「………あ、ああ悪い。」
「大丈夫なら良いんですが……さっきのお二人は?」
立花の問いに、上月は溜め息をついた。
「一応うちの情報屋だよ。かなり手を焼いているけどね。……倉橋くんが言った通り暁斗くんの情報を流したのは彼だ。独断での行動とは言え、監視不足だった。すまない。」
頭を垂れる上月に立花は慌てる。
「上月さんが謝ることじゃないです。僕らも悪かったんですよ……。目を離したりしたから……。」
そんな二人の会話を聞きながら、俺の意識はまた沈んでいく。
蓋をしたはずの記憶が鮮明に思い出されていく。
憎らしく、嫌悪して、それでも恐怖する、あの感覚………。
動悸が速まって、息が苦しくなる。
途端、視界がぐらついた。
「ぇ………倉橋さん!?」
目の前に立っていた立花に凭れ掛かるように身体が沈んでいく。
「大丈夫ですか!?倉橋さん!」
コイツじゃ俺を支えられない……起き上がらないと……
そんな事を頭の片隅で思いながらも意識は暗転していく。
「倉橋さん!倉橋さんっ!しっかりしてください!」
最後に見たのは泣きそうな顔の立花で、大丈夫だと伸ばしたはずの手が動かず、俺はそのまま微睡みへと飲まれた。
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