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CAGE3:少年の記憶と過ち54
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洋side
自我を持ち始めたとき、この世は既に地獄だった。
傷が残らないギリギリを狙って振るわれる暴力は止むことを知らない。
挙げ句、性欲の奉仕までさせられる。
父も母も同じで、俺はこれが異常なことなのだと小学生になるまで分からなかった。
当たり前のように育った。
それらが全て異常であるのだと気付いたとき、吐き気がして死にたくなった。
小学校中学年を迎える頃、俺は母親を抱き、父親には抱かれるようになった。
何度も舌を噛み切ろうと思った。
それでもこの世に思い止まったのは、守りたいものがあったからだーー。
ーーーーーーーーーーー
はっと目が覚めた。
飛び起きると呼吸が苦しくて、胸を押さえて前のめりに倒れ込む。
必死に酸素を吸って呼吸を落ち着けようとしていると、優しく背中に触れられる感触があった。
視線を横に流せば、そこには眉尻を下げた立花の顔がある。
「ハァッ………ハァッ…………立、花…ッ?」
「大丈夫ですよ、ゆっくり息してください。」
上下に擦られる速度に合わせて呼吸をすると、肺に酸素が行き渡っていく。
呼吸が落ち着いてくると立花の手が、再び俺の身体をベッドへと寝かせる。
「まだ寝ていてください。」
「……もう平気だ。」
「ダメです。貴方はすぐに一人で抱えようとする。自分なら平気だ、大丈夫だと。それは貴方の悪い所です。」
「………そう生きてきた。そうじゃなきゃ生きてこられなかった。」
「貴方の今までを否定するつもりはありません。ですが…」
立花の手がそっと頬に添えられる。
「今は僕が居ます。傍に居ます。だから一緒に背負わせてください。貴方の悲しみ、苦しみ、全てを一緒に背負いたい。倉橋さん、言いましたよね?僕を許してくださると。僕も同じです。貴方の全てを受け入れたい。」
「……………………」
「僕じゃ頼りないかもしれません。それでも倉橋さんを想う気持ちは誰にも……貴方自身にだって負けません。」
言い切った目は確かに強く……
ああ、敵わないななんてらしくないことを思った。
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