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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー2
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俺は生まれ、自分の自我を持ち始めたときには暴力が日常の隣にあった。
毎日殴られ蹴られ、それでも傷は残さないように……だから周りの人間は気が付くこともなかった。
幼い頃は痛みに泣いた。
でもそれもやがて渇れ果てて、何も感じなくなった。
俺が周りと違うのだと自覚したとき、死にたいと思った。
ただ、ただ与えられる苦痛の中に何一つとして希望など見出だせなかった。
それでも俺が死ぬことを選ばなかったのは、ある日の母親の一言だった。
「子供が出来たわ。貴方の弟よ。」
それは俺が8歳の時だった。
弟……
俺の、弟……
“兄弟”その言葉が表す繋がりに酷く心を揺さぶられたのを覚えてる。
母親の言葉を聞いてから目に写る景色が色を持った。
まだか、まだかと毎日毎日待ち望んだ。
母親の言葉があってから数ヶ月経った日、いつもは二人一緒に俺へと暴力を奮うのだが、その日は父親一人だった。
予定日がもうすぐで入院したと聞いた瞬間、胸が鳴った。
味わったことのない高揚感が駆け巡った。
「子供だなんて……下ろせと言ったのに。俺には洋がいるんだから、もういらないのに。」
そう父親は言ったが、俺にとっては待ち望んだ命だ。
そして俺は、その日初めて実の父親に抱かれたんだ。
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