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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー6
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にんまりと笑った両親の顔を今でも覚えている。
「洋、何でも言うことは聞くんだね?もし、もしも逆らったりしたらあの子をもっと酷い目に合わせてしまうよ。」
父親はそう言って俺の頬を撫でた。
母親は楽しげにクスクスと笑っていた。
悔しくて握り締めた手は力の込めすぎで真っ白くなり、噛み締めた唇には血が伝った。
毎夜繰り返される暴力と性行為。
耐えて、耐えて……
それでも心が折れないのは日向が居たからだ。
寝るときは同じ布団に入る。
そして毎晩誓うんだ。
「日向は兄さんが守ってやるからな。いつか二人で家を出よう。大丈夫、何も心配いらない。日向は兄さんが幸せにしてやる。」
日向に、そして自分に言い聞かせるように言い続けた。
月日が流れ、日向はどんどん成長していく。
初めて喋った言葉は、
「にーぃ…にーぃ…」だった。
最初は意味のない言葉だと思っていたけれど、どうやらそれは俺を呼んでいるらしく、気付いたときは何とも言えない高揚感に包まれた。
伸ばされる手は迷いなく俺を求めている。
「にーぃ……」
「うん、兄さんだよ。お前の兄さんだ。日向……日向……っ」
「にーぃ……?」
嬉しいはずなのに涙が出た。
いつも流す冷たい生理的な涙とは違う、凄く温かな涙。
「日向……産まれてくれてありがとう。」
「う……?」
「はは、日向にはまだ難しいかな?」
「うー……にーぃ!」
変わらない陽だまりの笑顔は、俺を救う光だ。
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