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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー12
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何も知らない純粋無垢な命だった。
でもいつの間にか成長していて、その命はとても力強いものになっていた。
近くにいたのに、全然気付いていなかった……
日向は俺が守らなければと、ただそれだけを思って生きてきた。
知らず知らずのうちに、こんなに大きくなっていたんだ……。
「僕、僕もにぃさんのこと守りたい。だから我慢しないで。」
恐る恐るその背中に腕を回した。
「僕そんなに弱くないよ。だって来年小学校だもん!」
少しだけ……ほんの少しだけ縋っても良いだろうか…。
「…うっ…………」
「にぃさん、大好き!」
「うっ…………ううっ……」
ずっとずっと一人きりで……何も見えない暗闇に一筋差した希望、それが日向だ。
「ごめんな……こんな、頼りない兄さんで。」
「そんな事ない。僕にぃさん大好きだよ。」
陽だまりのような笑顔は変わることなく俺を照らしてくれる。
俺もだ、と言おうとした口を閉ざしたのは部屋のドアがギィと音を立てて開いたからだ。
そこへと視線を向ければ手に包丁を握った母親が佇んでいた。
ただならぬ空気を感じて日向の身体を離す。
一歩一歩こちらに近づいてくる母親に恐怖心が増していく。
「貴方が……貴方さえいなければ……!」
包丁の刃先が向くのは俺だ。
母親の動きは決して早くないけれど、逃げようにも身体がうまく動かない。
ああ、ここで死ぬんだろうかなんて妙に納得する心もあった。
「ーーだめ!」
母親の包丁を持つ手に掴み掛かったのは日向だった。
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