アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー15
-
「何してるんですか!早く弟をーー」
「落ち着いて聞いてほしい。私は医者だ。」
「分かっていますよ!だからこうして頼んでるんじゃないですか!」
男性は眉尻を下げ、俺を見据える。
「医者は生きた人間の病気や怪我を治す。けれど死んだ人間を生き返らせることは出来ない。」
「何言ってーー」
「彼は、もう死んでる。」
底のない谷に突き落とされたようなそんな感覚だった。
「………は?はは、冗談だろ?だってそんなはずない!」
「落ち着いて……どうやら彼は頭を強く打ったようだね。脳震盪を起こしたようだ。」
「……ふざけんな!治せ、治せよ!」
堪らず掴み掛かった俺を引き剥がすこともなく、男性は口を開く。
「さっきも言った。死んだ人間を生き返らせることは、絶対に出来ない。」
「そんな………なんで………」
「……君のその風体といい、一体何があったんだい?」
もはや俺の耳には何も届いちゃいなかった。
男の横を通りすぎて、ベッドへと近付く。
横たわる日向に触れた。
冷たかった。
「おかしいな……抱き締めてくれたとき、あんなに温かかったのに……。」
俺が守るって言ったのに……。
「ごめんな……守ってやれなくて……ごめん。」
不思議と涙は流れなかった。
ーーカミサマ、もしいるのなら……
アンタは一体何を見ているんだ?
希望を失った俺の世界は、また真っ暗闇へと呑まれていく。
その後のことはよく覚えていない。
警察やら何やらがひたすら話を訊いてきたが、何も答えなかった。
心底どうでもよかった。
ただ一つだけ父親が行方不明になったという情報だけが耳に残った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
156 / 269