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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー19
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「そうだね。そういう考えに至らなかった訳じゃない。」
「それならどうして!……どうして止めてやらなかったんですか?」
ぐいっと振り向いた顔は、訳が分からないと全力で訴えてくる。
「……迷ってしまったから、かな。」
「迷う……?迷うって何を?」
「人の幸せについて。」
尚のこと意味が分からない、と啓介は眉間にシワを寄せる。
「倉橋くん、立花くん、それから暁斗くんの幸せを願うなら確かに止めるべきだった。でもそうしなければならない理由が蒼くんにもあったはずだ。彼は無意味なことはしない。それは僕がよく知っている。」
啓介にも思い当たる節があるのか、目を伏せて黙ってしまう。
「どうしてやるべきなのか、迷ってしまった。……大人なのにね、情けない。」
「………だったら、頼ってくださいよ。」
ポツリと言葉を落として、啓介は身体を反転させると僕と向き合うように座り直す。
「上月さんはいつも他の人に、他人を頼れと言うくせに自分は全然じゃないですか!」
「………………」
「言ってることとやってることが違うんですよ!もっと俺を頼れ!俺は珈琲を淹れるために傍にいるんじゃない……」
「…………………」
「俺、俺は……」
ぎゅっと胸ぐらを掴んでくる手。
「迷ったなら一緒に考えます。俺は上月さんについていくって決めてるんです。どんな選択をしても、離れないって決めてます。だから、」
いつも強気なその瞳が何だか少し揺れていた。
葉桜 啓介、この子は僕が拾ってきた野良ネコだった。
こんなにも、なつかれるなんてね……。
「啓介、」
名前を呼んで両手で頬を包むと、ビクッとその身体を震わせた。
「ーー好きだよ。君のその真っ直ぐなところ、僕は大好きだ。」
「なっ……またそうやって誤魔化して……」
「そうじゃない。今とてもそう思っただけ。ごめんね、少し沈んでいたみたいだ。僕らしくなかったね。」
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