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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー44
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「……何だこれ?」
「ケーキだよ。クリスマスケーキ。」
「……何で?」
「お詫び。」
いつも変わらぬ上月の表情が少しだけ曇ったような気がした。
「……何の?」
「何でもないよ。突き返されてもこれ以上は食べきれないから、ちゃんと受け取って。」
上月をよく見れば同じ箱をもう一つ持っていた。
「ああ、これは啓介の分なんだ。ちょっと怒らせてしまってね。」
そう言う上月は眉尻を下げた。
皆まで聞かずとも大体予想はつく。
「立花くんが姿を見せないところを見ると君も僕と同じかな?盛り上がっちゃった?」
「………うるさい。」
「ははは、ところでプレゼントは渡せたかい?前に僕に訊いてきただろう?」
確かに城峯兄弟に初めて会ったあの日、俺は上月に訊いた。
“クリスマスプレゼントってのは何をあげたら喜ぶんだ?”
“クリスマスプレゼント?倉橋くんもそう言うものに興味があったんだね。そうだなぁ……何でもいいと思うよ、気持ちが籠っているなら。ああ、でも指輪はもっと大切な瞬間に取っておくと良いかもしれないね。”
「結局何あげたの?」
「……言わない。」
「えー、気になるんだけどなぁ。」
「………何かイラつくから言わない。」
「理不尽!あれ、倉橋くんピアスなんて開けたんだ?」
本当、目敏いよな……。
「ああ、なるほどね。ふむふむ、君もなかなか考えたねぇ。」
全てを読み取った空気を醸し出されて、腹立たしい。
「………じゃあな。」
面倒臭くなってドアを閉めようとすると、ギリギリのところで上月の足が差し入れられ、叶わなかった。
「………しつこい。」
「そう言わずに少しだけ話に付き合って欲しいんだ。」
笑みが消えたその表情は別人のように冷めて見えた。
「ーー君のお父さんについての話だよ。」
「ーーー!」
終ったことのはずなのに、またドクンっと胸が鳴る。
身体が急に冷えて、それなのに背中を汗が伝う。
「外で話そうか?」
「………………分かった。」
着替えを取りに一度部屋へと戻る。
寝室では未だ立花がすやすやと寝息を立てていた。
ソッと近付いて額に口付ける。
「……いってくる。」
“冷蔵庫にケーキある”というメモを書き置きして、俺は上月に連れ立たれ家を後にした。
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