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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー46
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城峯兄弟が他の兄弟よりも深く互いを思いやっているであろうことは、二人の様子からも窺えた。
弟を守りたい兄の気持ち……分からないわけではない。
「……それで?」
「君の父親は君のこと大層愛しているようだね。」
「……………………」
「倉橋春伊の狙いは間違いなく君で、暁斗くんは君が関わっていたから当て付けに使われた。」
分かっていた言葉でも腹が立つ。
「……相変わらずねじ曲がった思考だな。あの人らしい…何年経っても変わらない。」
「倉橋春伊は君に関する情報を蒼くんから買い取ったようだよ。特に出所してからここ最近までのね。」
「…………」
「何を、どうしたいのか……真意は分からない。でも倉橋春伊が君や君の周りの人間に興味を持ち、何かしらアクションを起こそうとしているのは間違いない。」
俺の周り……
次にアイツが狙ってくるとするなら標的は間違いなく立花だ。
「……アイツは傷付けさせない。絶対に。」
「……立花くんだけじゃない。君自身も危険なんだよ。」
「……俺はどうなってもいい。でも立花だけは……立花にはこれ以上傷を負ってほしくない。アイツは優しい幸せに包まれて生きていくべき人間だ。」
誰よりも優しく、温かく、朗らかで…
周りの、人の幸せを心から願える人間。
「……君も僕と同じで分かっていないね。」
上月は嘆息し、足元を見つめた。
「啓介にね、怒られたんだ。もっと他人を頼れってね。……僕がそうであったように倉橋くんも何でも一人で背負おうとするタイプなんだね。」
「………………」
「君が傷付いて、君が消えて、それで立花くんは幸せになれるのかな?傷付かないとでも思ってるのかな?」
「………………」
「自己犠牲を払ってまで守りたいなんてのは、ただのエゴだ。」
いつものヘラヘラとした笑みは消え、真っ直ぐな瞳が俺を捕らえた。
「彼の思い描く幸せの中に君は存在している。」
ゆっくりと手が伸ばされる。
その手がくしゃりと俺の頭を撫でた。
「もう充分すぎるほど傷付いてきただろう。君達二人は幸せになっていい。幸せを望んでいい。……そのために僕は力を貸すよ。」
手を振り退けなかったのは、言葉が心地よく響いてきたから。
「僕だけじゃない。啓介も蒼くんもね。前にも言ったよね。君は周りに生かされ、君もまた周りを生かしてるって。」
「…………………」
「君達の幸せを願う人間は、君達以外にも存在するんだよ。」
神様でさえ、まともな手を差しのべてくれやしなかった。
それなのに今伸ばされている手は、躊躇いもなく俺の中へと触れた。
驚きと喜びと、少しの恐怖が心を占めた。
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