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CAGE4:あの日の同罪ー倉橋 洋ー50
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「……アンタを幸せにしたい。」
そう呟いたあと倉橋さんは慈しむような笑みを見せ、握られていた手に力が増した。
「……だけじゃ足りないんだ。」
「?」
「……アンタと、立花と一緒に幸せになりたい。」
「ぇ……………」
「……今は、そう思ってる。」
それはあまりにも予想外すぎる言葉で、僕は呆けたように倉橋さんを見上げた。
「俺とアンタを繋いだのは、あの日の同罪だ。これは一生の枷だし、切っても切れない俺達を繋ぐ鎖にもなる。でも俺はアンタとの間にもう一つ繋がりが欲しい。……立花と同じ幸せを見たい。」
それはまるで………
「……プロポーズ、みたい…」
「ん?……そうか?……そうかもな。」
いつだってそうだ。
倉橋さんの言葉は真っ直ぐで、聞いている僕が恥ずかしくなるぐらいなのに…
当の本人は何でもないような顔をして言って退ける。
恥ずかしくて、むず痒くて、嬉しくて、それから…
少し悔しくて……。
「……立花?」
笑っていたはずの倉橋さんが途端に険しい顔をして僕の方へ手を伸ばした。
その手が優しく僕の目元を拭っていく。
「……泣いてる。」
「……ぇ」
言われて自身の頬に滴が伝うのを感じた。
「あれ……?」
「……泣くほど嫌だったか?」
「ち、違いますっ!そうじゃ、なくて………そう、嬉しいんです。嬉しくて、温かくて……何だか急に涙が……」
自覚すると涙が量を増したように思えた。
「僕は、ダメですね……っ。本当は僕が倉橋さんを幸せにするって言ったのに…っ…僕ばっかり、こんな、幸せな気持ちになってる……っ。」
拭っても拭っても涙は止まらなくて、その内その手を倉橋さんに掴まれた。
「……赤くなる。」
「………はい。」
「……幸せに決まってる。」
「…………………?」
「…好きな奴が幸せだと言って嬉し涙を流してるんだ。幸せに決まってる。まあ、俺はアンタみたいに感性豊かじゃないから涙は流せないがな。」
からかうような口振りに思わず笑ってしまった。
「……アンタはそうやって、いつでも笑ってろ。」
「ーーはい。貴方が一緒に居てくださるのなら。」
季節は冬で、今日はクリスマスで、とても寒いはずなのに…
繋いだ手と少し触れ合う肩と、それから幸せが溢れる心とがとても温かく僕を包み込んだ。
「行きましょうか、遅くなってしまいます。」
「…ああ」
「そうだ。倉橋さんも料理手伝ってくださいね。卵、リベンジしましょう!」
「………気が向けばな。」
ふわりと雪が舞い始め、買い出しを終えて帰宅する頃には、すっかりと本降りが始まっていた。
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