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CAGE5:日常に潜む影13
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「律はさ、心が狭すぎるんだよ。」
と不貞腐れるように言うけれど、それは律さんの愛ゆえだろう。
「でも瀬と律もお似合いだよ。お互い心開き合ってて何でも言えて…羨ましいなって思えちゃうもん。」
そう言う折原くんに僕も同じ気持ちだった。
お互いの過去を知り、罪を知り、体温を知った…。
それでもまだ全てを曝け出せたわけではない。
全てを知ってほしいのに心が躊躇うのは、僕自身がまだ前に進みきれていないからだ。
小さなヤキモチは妬けても、喧嘩は出来ない。
まだ、怖い。
それに……倉橋さんもきっと躊躇いがあるんだ。
だから本気で怒ったりしない。
僕らの距離は、まだ少しだけ遠いのかもしれない。
いつか小さなものでいい……
倉橋さんと喧嘩、できるかな……。
「それに喧嘩するほど仲が良いって言うでしょ?」
「そうだけどさぁ………」
「とか言って大好きなくせに。」
「う……まあ……好き、だけどさ……」
結局は律さんが大好きな雪見くんはストローに口付けてもごもごと押し黙ってしまう。
そんな姿が可愛らしくて律さんが雪見くんを好きな理由が分かるような気がする。
折原くんにしたって、とても可愛い容姿をしていて……改めて考えると倉橋さんは僕のどこが好きなのだろう?
二人みたいに可愛いわけでもない…身長だってそこそこあるし…倉橋さんなら本人の意思は兎も角、女性にだってモテるわけで……わざわざ男の僕を好きになる必要なんてなかったはず……。
「……立花さん?どうしました?」
折原くんの怪訝な顔が僕を見ていて、すっかり思案に更けてしまっていたことに気が付いた。
「…ぇ、あ、すみません…少し考え事をしていました。」
「少し不安そうな顔をしていましたが、何かありましたか?」
「いいえ、大丈夫です。ごめんなさい、少しだけ二人が羨ましくて…」
「俺達がですか?」
首を傾げた折原くんに僕は苦笑した。
「はい。二人とも僕から見ても可愛くて、羨ましいなって…僕は可愛いげがないし、倉橋さんはどこを好きになってくれたんだろうって考えてしまっていました。今までこんなこと考えたことなくて…」
好きだと告げられたことが嬉しくて、こんなこと考えたこともなかった。
「ふふ、立花さん、そう言うことを考えている貴方は充分可愛いと思いますよ?ねぇ、瀬?」
「うん、僕もそう思いますよ。こんなに可愛い人が相手じゃ倉橋さんが溺愛するのも分かります。」
慣れない単語の響きに頬が熱を持つ。
「で、溺愛ってそんな……」
「倉橋さん独占欲強そうですし、絶対溺愛されてますって。もっと自信持っても大丈夫ですよ。」
自信……
倉橋さんに愛されているという自信…………。
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