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CAGE5:日常に潜む影31
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家に戻る頃にはすっかりと日が暮れていた。
帰り道は終始無言。
アパートへ近付くと甘い香りが鼻を擽ってきた。
匂いの元は俺達の部屋かららしい。
ドアを開けばより一層強く香りが漂ってくる。
ドアを開けた音に気付いたようで中から直と紅が仲良く玄関へと足を向けてきた。
「お帰りなさい、洋さん。」
「……ん、ただいま。」
とことこと近寄ってくる直は大して俺と身長差はないはずなのに、何処か小動物を連想させる。
軽く頭を撫でてやれば尚更だ。
「蒼兄さんもお帰りなさい!」
紅は蒼に向かって一直線へ駆けていき、そのまま飛び付くように抱き付いた。
蒼もその身体をしっかりと受け止めて、背中に腕を回した。
「ただいま。良い子にしてたか?」
「もちろん!あのね、立花さんと一緒にクッキー作ったんだ。はい、蒼兄さんに作ったんだよ。」
小さな袋にラッピングされたクッキーを紅は楽しそうに手渡した。
なるほどこの甘ったるい香りの正体はこれか。
「蒼兄さん、甘いの好きでしょ?立花さんにお願いして少し甘めに作ったんだ。」
手渡されたクッキーを見て、蒼は目を細め笑った。
「ありがとう。上手に出来てるな。」
「へへ、でしょ!」
そんなやり取りを隣の直も微笑ましく見ていた。
平和……だな、怖いぐらいに。
俺の視線に気付いた直が、俺を見上げて微笑んだ。
「洋さんの分もちゃんとありますよ。もちろん、甘さ控えめです。」
「……ん、ありがとう。」
俺の味の好みを十分理解している直が作る菓子類は、甘いものが苦手な俺でも美味しく食べられる。
「世話になったな。」
「お世話になりました。あの……また遊びに来ても良いですか…?もっと料理とかお菓子とか色々教えてもらいたいです!」
去り際の言葉に直は、いつでもどうぞと笑った。
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