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CAGE6:止まない愛情2
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直side
正直に言って、僕は今少し機嫌が悪い。
本当に少し、ほんの少しだけ。
湯気立つカレーが乗った皿を二つ手に、ダイニングへ向かう。
両手のカレー皿をドンッと同時に置くと、ダイニングに腰掛けながら本を読んでいた洋さんがビクッと顔を上げる。
「……どうぞ、カレーです。」
「……あ、ああ」
持ってきた二皿をどちらも洋さんの前に並べたのは間違いではない。
洋さんが本を置くと空かさず足音が近付いてきて、青年が洋さんの膝の上に跨がり座った。
何でも屋に突如現れた素性の知れない青年がこの部屋に来て一週間。
青年について分かったことは美柴(ミシバ)という名前だけだった。
この名前だって本当なのかは定かではない。
と言うのも青年が名乗っただけであって確かな情報筋ではないからだ。
蒼さんと紅くんが美柴くんについて調べても何ら情報は得られなかった。
一つだけ蒼さんから「俺達が調べても何も情報が掴めなかった。何一つもだ。まるで全て、何もかもを消されたようにな。気を付けた方がいい。」と忠告を受けた。
僕らの過去までも調べあげた蒼さんと紅くんが何一つ情報を掴めないなんてのは確かにおかしい。
そんな思案に更けていた僕は洋さんの溜め息で現実に引き戻された。
「………邪魔だ、食い辛い。」
「食べさせる?」
「いらない。退けば良いだけだ。」
「ふぅー、ふぅー、はい、どうぞ。」
洋さんの言葉に従う素振りなんて全くない。
スプーンに掬った一口分のカレーを洋さんの口元へと運んでいく。
洋さんは再び溜め息をつくと美柴くんの手を押し返して、テーブルのカレー皿を手に取る。
そのまま食べ始めた洋さんに対して、特段何かを言うわけでもなく美柴くんもカレーを食べ始めた。
ちなみに膝の上に乗っているのを退けないのは、洋さんが根気負けしたから。
最初こそ嫌がり一回一回床に下ろしていたはずだったのだけど、何度やっても戻ってくる執念深さに洋さんも諦めてしまったようだ。
まあ、確かに……
美柴くんが人の話を理解しようとしていないってのは分かりますけどね…。
だからと言って、そこをそんな容認しなくても良いんじゃないですかね……?
と少しばかりモヤモヤを抱えてしまっている僕は、ほんのちょっとだけ不機嫌だ。
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