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CAGE6:止まない愛情22
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外はまだ寒い。
美柴くん、ちゃんと暖かい格好してるでしょうか……。あげた手袋してくれてるかな……。
しもやけ気味の自分の手を見つめて頭を振りかぶった。
いけない、今日は雪見くんと会うんだから気持ちを切り替えないと。洋さんにも心配を掛けてしまっているし……。
大丈夫。きっと美柴くんのことだから何てことない顔して戻ってきてくれるはず。
努めて明るく考えて、待ち合わせのカフェまでの歩みを速める。
今日はちらほらと雪が降っているためか人通りが少ない。
横断歩道の信号を待つ人も、僕と向かい側で佇む男性一人だけだ。
正直車の影ひとつ無く、信号を待つのも馬鹿馬鹿しい光景なのだけれど、僕と向かい側の男性は律儀に待っていた。
赤から青に変わった信号。
僕と男性はそれぞれ一歩を踏み出した。
そんなに長い横断歩道ではない。
少し歩みを進めて、向かってくる男性が僕の方へ足を向けていることに気が付いた。
雪避けの為に被っているフードで前が見えていないからかもしれないと、僕は進む方向を変える。
けれど男性はそれに合わせるように方向を変えてくる。
何度やっても結果は同じ。
この人、僕に向かって歩いてきてる……?
不穏な空気に足を止めた僕に、男性は速度を変えることなく歩いてくる。
そうして僕の前まで辿り着き、足を止めた男性はゆっくりと口を開いた。
「立花 直さん、ですね?」
驚くほど落ち着いた声音だった。
「……何かご用ですか?」
訊ねると男性は被っていたフードに手を掛けて、それを外す。
見覚えのない顔だ。でも全く知らないという印象も受けない。
「初めまして、ずっと会いたかったんだ。」
「え……?」
僕が首を傾げたのと同時に、チクリとした痛みが首筋に走った。
そして次の瞬間には視界がぐにゃりと歪んだ。
「な、に……?」
急に力が入らなくなった体はバランスを崩して男性の方へと倒れ込んでいく。
「大丈夫、少し強めの睡眠薬だから。」
「な、…ん…で……」
「おやすみ。次に目を覚ましたら、そこはきっと地獄だよ。」
だめだと自分を叱咤しても意識は遠退くばかりで、最後に見たのは男の上がった口角と点滅を繰り返す青信号だった。
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