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上司から呼び出されて、相手の元に行くと笑って言われた。
『君は、またやってしまったなぁ~…。』
目の前が真っ暗になった。トクメイは…ある日を境に、会社に行かなくなった。家に引きこもっていると、電話が鳴った。電話線を切ると、携帯が鳴った。会社が自分を嘲るために探しているのだと、恐ろしくて震えが止まらなかった。
次の会社なんてとてもじゃないが探せないと思った。引きこもり生活を続けていたら、水道やガスを止められ、大家に家賃を迫られた。貯金を切り崩してやりくりしていたが、限界があった。
療養と介抱をしている両親がいる実家に心配をかけたくはなかった。生きていてもいいことはないし、潔く首を吊ろうとしていたが、付近の頑丈そうな梢に引っ掛けた手持ちのロープがぷっつんと切れてしまい、どうしようもなくなった。
死にたくなったんだから、あとの人生なんてどうなってもかまわない。決心して、コート以外は裸になる。…女性が出てきたら、脅して警察を呼んでもらおう。
しかし、ふと思い留まる。待てよ。もしかしなくてもこれは、通報を頼まれた女性からしたらいい迷惑じゃないか。自分の自殺の巻き添えを食らっているではないか。
悩んでいたら、深夜になって一段と寒さが増した。凍死でもいいや、と考えてベンチに横たわっていたら、男がやって来た。
まだ死ぬ望みは捨てていなかったから、自分を酷い目に合わせて下さいと懇願した…つもりだ。寒さと長時間の懊悩の末、言葉もまともに考えられないような状態になっていたから定かではない…。
一冬のダイニングはキッチンとリビングに分かれている。…トクメイはリビングにある木製の丸テーブルに二皿分の食事を置く。スプーンを置いたところで、ダイニングのドアが開き、中から一冬が顔を出す。一冬は肩にタオルをかけ、湿り気を帯びた髪で現れた。いかにも風呂上り、というような風体だ。
「おっ、い~い匂いじゃん。…って、オレが口にした通り焼き飯にしなくても良いのに。」
言いながらも、一冬は席に着く。トクメイは空いた方の席に座って、ニコニコしながら手を合わせる。
「材料がちょうど良い分あったんですよ。…あっ、キッチンにおかわりありますよ。あと一人分くらい。多めに作っておきましたんで。僕は味見で腹いっぱいなんで、おかわりは一冬さんが召し上がって下さい。」
「ふぅん。…いただきます!!」
言い終えるや否や、一冬は勢いよく料理を口にかきこみだす。いい食べっぷりだなぁ、と考えならトクメイもスプーンを手にした、直後だった。
「まっず。」
一冬が冷淡な表情で切り捨てると、片腕で卓上を薙いで、自分の食事を床に落とす。
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