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怒り狂った家主は、トクメイに枕とタオルケットを押し付けてさっさと寝室に引っ込んでしまった。
『お前は床で寝ろよ。良いか??オレ様お気に入りのソファーを無断で使っていたら、即外に放っぽり出すからな!!』
物凄い剣幕で迫られて、トクメイは了承するしかなかった。文字通り、かたい寝床につく。
目を閉じて、寝ようとするけれど先程の興奮が収まらない。大声で詰め寄られて散々叱責された。思い出すのを必死に拒否するが、頭は回想をやめてくれない。下唇が戦慄く。震えを止めようと前歯で噛んだら、反射みたいに両目からぼろぼろと涙が落ちていく。
「おれは…っ、ただ働きたくないだけなのに…っ!!」
トクメイは嗚咽を押し殺して、一人密かに泣いた…。
トクメイは寝起きがいい方だ。
仕事に行っていた際は朝七時に目覚まし時計をセットしていたが、鳴るより早く起床するのが定番だった。
トクメイの知っている朝は、必ず窓ガラスにかかったカーテンの間から差し込む太陽の光や鳥の囀りが彼の覚醒を促していた。
カンカンカンカンッ!!
「起きろ。」
「ぅびゃああいッ!??」
…決してこんな、鉄パイプでコンクリートをガンガン殴打しまくった音みたいなもので起きた試しはない。
「な…っ、何ですか!?」
面食らった顔のまま、トクメイは起床を促した張本人…一冬を見る。…一冬の手には、フライパンとおたまが握られている。
「だから、起きろってんだ。…二度も言わせるな。」
そっけなく言うと、一冬は身を翻し、さっさとダイニングから出ていこうとする。トクメイは、まだ鼓動が跳ねているのを感じながら相手の背中に語りかける。
「いッ、今何時ですか…??」
一冬の答えは簡潔だった。
「朝五時だ。それと、朝食を作れ。トーストにバターを乗っけるだけでいい。」
「五時…!?」
トクメイは目眩を覚える。…普段なら、あと数時間は寝られるはずだ。彼が考えている内に、一冬はダイニングの扉の向こうに消えてしまった。
渋々、トクメイはのろのろとした足取りでキッチンに向かい、トーストとバターを用意する。トーストなら文句の出ようもないだろう、と考えているとジャケットを脱いだスーツ姿の一冬がリビングにやって来る。
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