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「ど…っ、どうですか!?」
一冬は小さく唇を窄めて、口笛を吹く。
「…三点、ってとこだな。」
「五点中でしょうか!?」
「バァ~カ!!…百点中の三点だ。」
そぉんな~、とへなへな床に座り込む同居人に、一冬はキビキビと告げる。
「トクメイ、今日中にオレん家を全室掃除しろ。」
「ふア!?」
唖然としている相手に対し、一冬は額に手をやる。
「…お前、一日中オレの家でゴロゴロするつもりだったのか!?」
ハッとした様子のトクメイは、その場で姿勢を正して敬礼する。
「滅相もございません!!」
「…絶対、図星だったろう。」
ったく、と吐き捨て、一冬は外へと通じる扉を開けようとする。
「ご主人様!!」
慣れというものは非常に恐ろしい、とこの時トクメイは思った。
「なんだ??」
振り返る一冬も、相手からすると感覚が麻痺してきている気がした。
「あ、あの…いっ!!」
いってらっしゃい、と言うつもりが、皆まで聞き届けずに相手が先に出て行ってしまう。
「じゃあな!!」
「えっ…。」
バタンと勢いよく閉まった扉を前に、トクメイは肩を落とす。
「久々に実家の玄関で家族にするように、言ってみたかったのにな。」
願望叶わぬまま、トクメイは一人寂しく、玄関で囁く。
「…いってらっしゃい。」
本日は一日中、掃除。今までグータラに過ごしてきた反動か。トクメイは過去にないくらい一生懸命に働いた。特にキッチン、トイレや風呂等の水回りは頑張った。普段は毛ほども興味がない換気扇の洗い方さえ、一冬から許可をもらっていたパソコンで調べて、念入りにした。
全ては、一冬に叱られないためである。…愛想を尽かされたら、せっかく拾ってもらった身の上だったというのにまた一から始めなくてはいけない。
しかし、数ヶ月家から一歩も出ずにいた身。運動量の多さからか。夕暮れ、一冬が帰ると連絡してきた時刻には、満身創痍で床に転がっていた。…尚、ソファーは使うのが禁止されているから、使えない。
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