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トクメイは夢を見ていた。小学生の時の、思い出だった。
朝起きると気怠くて、トクメイの母が異変に気づいて学校を休むようにしてくれた。
風邪を引くと決まって、母は普段の倍優しかった。
布団の中に入った小さなトクメイは、『何かいるものある??身体、辛いところある??』と再三声をかけられ、むず痒くも温かい気持ちになる。
大丈夫。辛くないよ、お母さんがいるもん。
声を出そうとして…現実のトクメイは腹部に重い衝撃を受け、目覚めた。
「…ぅ、がぶふ!??」
身を起こすと、そこには仁王立ちの主がいて、トクメイは全てを悟った。
…しまった、疲れて床に寝そべっていたから、どうやらそのまま寝てしまったらしい。
室内にはいつの間にか電気がついていて、煌々と辺りを照らし出している。見ると、窓ガラス…ベランダに通じるダイニングの窓の外は真っ暗だった。
「あ、あの~…、ご主人様、これには事情があって…。」
「ほう~…。スヤスヤ寝ていたお前に、事情、ねぇ??」
一冬の双眸が疑惑の眼差しを送ってくるのを受け、同居人は慌てて背筋を正す。
「ちっ、違います!!ほっ、本当に僕は頑張ったんですよ!!が、頑張って、全室綺麗にして…。」
「全室綺麗、だと??」
一冬はゆっくりと言い終えると、片腕をあげ、人差し指でダイニングの窓を指差す。
「ま、ど…。」
頭を斜めに倒すトクメイ。主の示す意味が、上手く飲み込められない。
「窓の掃除、してねぇだろ。」
「・ ・ ・あッ!!」
短く叫んだと同時に、平手で肩を叩かれた。痛みが走る。トクメイが顔を歪ませた直後、相手に片腕を引かれる。
「…おら、さっさとしろよ。」
「さっさとしろって…えっ??」
茫然としていると、一冬は真顔で相手を窓の外に追い出す。トクメイが驚いている間に、目前で窓が閉まる。カチャッという微かな音を、トクメイは聞いた。続けざまにクリーム色のカーテンが閉められ、彼の顔が一瞬にして紙の如く白くなる。焦って、窓ガラスに縋り付く。
「ま…、待って下さい、ご主人様!!ごめんなさい!!次からは上手くやりますから!!今夜は、今夜だけはよしましょうよ!?」
十二月の夜の空気は当然ながら冷たく、容赦なくトクメイの体温を奪っていく。窓を片拳で何度も叩いていたら、一度窓がからからと開いた。良かった、温情だ、とトクメイが救済に顔を輝かせた刹那。室内からベランダに、掃除道具一式が放り込まれ、またピシャリと窓が閉まる。
「・ ・ ・~ッ」
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