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涙を落としながら、泣き声を必死に抑えながら、男は一冬が隣に並んで背を押す通りに足を動かした。冷徹非道な者と知っていながら、同居人は一冬に従う他、ない。
「入れ。」
促されてやって来たのは、浴室の前だった。言われるまま、同居人は浴室の中に入る。…浴室には簡易なバスタブとシャワーがついている。
「座れ。」
一冬の命じるまま、同居人はタイルに座り込む。ベランダで駄々をこねたものだから、てっきり折檻されるのだろうと考えたセイか、トクメイは自然と正座になっていた。
「オレがいいって言うまで、動くな。」
一冬の凍てついた声に、相手はぎこちなく頷く。
「…はい。」
最初に酷い目にあっていいと言ったのは自分だ。発言には責任を持たないと、とトクメイは両目をギュッと強く瞑る。
「息、忘れるなよ。」
台詞の意味を推し量るより早く、無数の温水の礫がトクメイの頭上から降り注いだ。トクメイが戸惑い、瞳を押し開けるとそこには常日頃の仏頂面で、温かいシャワーをかけてくる主がいた。
「ご…しゅじん、さま??」
トクメイが動揺していると、主は項をガリガリと掻き毟りながら話し出す。
「ベランダに居続けられるのも、凍死や衰弱死もやめろ。ついでに言うと、風邪を引かれるのも困る。オレに移ったら、会社に行けなくなるからな。」
ほら服脱げ、と怒鳴られてトクメイはあたふたと言う通りにする。上半身を脱いだところで、一冬は何を思ったか。トクメイに出しっ放しのシャワーを押し付けてくる。
「腕が疲れた。…家畜といえどお前一匹でシャワーくらい浴びられるだろ。オレは腹が減ったから飯を食う。今晩は、お前が掃除にもたついたセイでインスタントだ。どうしてくれる。」
一頻り罵ってから、一冬は浴室から出て行ってしまった。
らしくない一冬の振る舞いに違和感を覚えながら、同居人は身体を洗い、浴室を後にする。
素っ気ない食事を終え、テレビを見るなど小休止をしてから、さぁ寝ようかという段になって、一冬は同居人に話しかける。
「おい、トクメイ。こっちに来い。」
「は、はぁ…。」
一冬が向かったのは寝室だった。布団でも敷けばいいのかな、と考えていたトクメイだったが、ベッドがあったので瞬時に発想は却下される。
一冬はベッドに潜り込むと、横をぽんぽんと手で叩く。…トクメイの頭が真っ白になる。
「え、っとぉ…。」
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