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「い、一冬さん。開けて…。」
同じく初日にスリッパを舐めさせられたが、口に含んだ後キッチンまで導いてシンクに吐き捨てて口をすすげと言われた。念入りに口を綺麗にしているか、見守ってくれた。
かり、かりかりかりかり…。
「お願いです。一冬さん。」
窓を掃除したら、乱暴だったけど温かいシャワーを浴びせてくれた。あの後、ベッドに入れてくれたのは、抱き枕にするなんてのは口実で、冷たい自分の身体を温めようとしてくれたのではないか。
かり、かりかりかりかり…。
「ご…っ、ごめんなさい…。」
一冬は必ず、叩く時に肩を叩いた。カッとなっても、頭は決して狙わない。頭部は少し怪我しただけで大量に出血するし、後遺症も残りやすい。加えて、人間の頭は首で支えられていて不安定だ。比較して、胴体の方が安定はいい。
かり、かりかりかりかり…。
「ごめんなさい、ごめんなさい、一冬さん。」
一冬はソファーを禁止して、床に寝ろと言った。…二日目、掃除している最中にトクメイは気がついた。一冬のダイニングには床暖房が入っている。しかも、トクメイが寝る時は必ず家主は床暖房の電源を入れていた。
かり、かりかりかりかり…。
「もう二度と口ごたえしません。だから、ここを開けて下さい。」
かり、かりかりかりかり…。
奥歯を噛み締め、嗚咽が漏れないよう注意しながら、トクメイは震える声で懇願する。
「…あなたの傍に、いたいんです。」
ややあって、扉向こうから、声が返ってくる。
「口ごたえしないなら、言う通りにしろ。」
扉のすぐ近くで、一冬は佇んでいる。仕事に出ていかなければいけない時間帯だというのに、仕様のない豚のために、彼が去っていくのを辛抱強く待っている。
「一冬さん…っ」
トクメイは扉にあてた手を拳にし、深く俯く。…どうして、気がつかなかったのか。一冬は酷い扱いをしながら、彼を家から追い出そうとしていた。あるべき場所に、帰そうとした。
本当はとても優しい人物なのに、まるで怖い者の如くわざと振舞っていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい…っ!!」
色んな人の気持ちを確かめようともせず、自分は無理をさせていた。
天を仰いで、大きく口を開き、トクメイはわんわん泣く。頬に滑る涙と一緒に、自分なんて地面に溶けてしまえばいいのにと思った。
しばらく泣いていると、一冬の隣室から住人が出てきて警察を呼ぶと脅された。
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