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ここは会社で、泣いたら一冬に怒られるかもしれないと考えるのに…涙腺はいうことを聞いてくれない。
「い、いち…っ。いちふ、…さっ!!」
さっき嫌というほど泣いたのに、涙は枯れる気配が一切ない。
「えっ、えっ…??ど、どうしちゃったの、匿間君。」
一冬は、ふっと双眸を眇めて、相手の額にデコピンを食らわせる。
「…バカ面。」
一冬らしい言葉に、相手は喜びにくしゃりと顔を歪めた…。
「…どこから、気が付いていたんですか??」
二人は、貸ビルの屋上にいた。貸ビルの入っている企業なら、屋上は自由に使っていいと許可が出ているのだ。匿間が半ば強引に連れてきた担当者は、不機嫌丸出しの顔で煙草を口にする。…これには、匿間の方が目を剥いた。
「た、煙草、吸うんですか。」
小さく舌打ちする。先程、三上の前にいたやり手営業の仮面は外れていた。
「んだよ、吸っちゃ悪いのかよ。」
「いえ…。僕といる時は吸ってなかったんで。」
唇に挟んだ煙草をピコピコと上下に振りながら、一冬はあ゛~と唸る。
「そらお前…。お前が嫌かもしんねぇ~からだな…。」
「…っじゃなくて、いつから僕がここの会社員だった匿間って知っていたんですか!?」
不審な点はいくつもあった。言われてみれば、匿間の本名を知らないのに”トクメイ”と近い名をつけていた。更に、『笑顔でいるのは、キツい』と言った時、『そっくりそのまま、お前に返す。』だなんて話した。…あれはもしかすると、社内で笑われることの多かった匿間を遠巻きに示していたのではないか。
「…いつからって、最初っからだよ。」
ジッポで煙草の先端に火を点け、空気中に煙をふーと吐き出す。匿間は煙臭いの嫌だな、と眉を顰めたが、直後に気が付く。…一冬は、何気なく相手の風下に立っていた。
「…公園で、ですか。」
「バーカ。…それより前からだっつの。」
一冬は人差し指と中指で煙草を口から外し、空を見上げる。…対する匿間は、相手の台詞を上手く理解できずにいた。
「それより、前って…。」
怒んなよ、と前置きしてから一冬が答える。
「半年前から。」
「はんと…ッ!?」
匿間は、開いた口が塞がらない。
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