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今日も明日も明後日も 2
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「…は?」
検診を終えてから早1週間、家に検診結果が届いた。
中を見るとそこには説明書きと「Ω」のマーク。
何回も名前、住所、高校名を見たが正真正銘俺のもので、
文章を見直しても「Ω」なのは変わらず。
驚きで言葉も出ないとはこの事である。
俺はその場で立ち尽くすしかなかった。
運命とは残酷である。
ーーーーー
「あ、俊太おはよ〜」
「…チッ」
「あれ?どうしたの?今日は機嫌悪いね」
「うるさい。喋るな」
「イライラするならカルシウムとると良いよ」
「余計なお世話だ」
検診結果が結果だからか、いつもよりアイツにイライラする。完全な八つ当たりだ。
悪いとは思うがβだと思っていた、しかも医者から覆る事は無いと言われていた結果がつい昨日裏切られたのだから許して欲しい。
「…おい谷田。」
「!!俊太!!どうしたの?」
「お前検診結果どうだった」
「俺?俺はαだったよ〜俊ちゃんは?」
「…ついて来い。一旦教室から出るぞ」
「?はーい」
俺はコイツに何を言うつもりなのか。
俺の家系はαだ。βというのですら冷たい目で見られるのに家族にΩでした。なんていったらどうなるか。誰にも言えず冷たい目からも少し怯えながら過ごす日々。心が弱っているのかもしれない。
でも、人に、ましてやコイツに話すことじゃない。
頭の中では「やめろ。止まれ。今なら引き返せる」
と思うのだが、足が止まらない。とうとう、人気の少ない場所に来てしまった。
やめろ。言うな。コイツに言ってどうなる。
分かってる。分かってるけど、誰にも言えない心細さが勝って。
口に、出してしまった。
「……俺、昨日の結果Ωだったんだ。…去年はβって結果を貰ったのに、だ。医者に覆る事は無いとも言われた。…家族はα家系なんだ。その中でβなんて平凡な何処にでもいる奴だなんて、と只でさえ冷たい目を向けられるのに、ここでΩでした。なんて言ったら、俺は…俺は………谷田…どうしたらいい…」
「そっか…怖かったね俊太。でも大丈夫。去年βだったなら、もしかしたら結果のミス。なんて事も有り得る。もう1度検診しておいで。俊太の家系がαならΩなんて結果はきっと間違いさ。そうだ!!俺が検診付いてってあげようか!」
「…うるせぇ付いてくんな」
「ふふ。やっと元気になったね。悩みがあるなら俺の所まで話においでよ。俊太ならいつでも大歓迎!ってね。あ、そろそろHR始まっちゃう!!急ご!俊ちゃん!!」
「……ありがとな。…じゃ、俺先行っとくから」
「え!ちょま、俊ちゃん足速いね!?」
ーーーーーーーー
HR中先生の怠い話は聞く気にならず、先程の事を考える。
谷田の優しい声に、目に、おどけているのに安心させるような話し方に、安心感を覚えた。
いつも冷たく突き放してるというのにこんな事をしてくれるなんて、案外谷田は良い奴なのかもしれない。
なんて思うおれは絆されているのだろうか…?
まあ、ただのお節介が今の俺にはそう感じた。というのもあるのだろうが。
嗚呼、心の中が温かい。
少し口角が上がるのを感じた。
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