アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お財布の行方-2
-
「そ、そうだよ…僕が……やった…。」
自分でも声が震えているのがわかる。
怖い。
海道くんは父親が社長さんで誰も頭が上がらない。
学校一の権力持ちだ。
逆らったらどうなるかなんて誰でもわかる。
そして、それをよく思わない人はたくさんいる。
本当は違うのに演技をしなくてはならない苦しさが僕の胸を締め付ける。
「僕が…みんなの、いない時に…やったんだ…。」
目に涙が溜まっていく。
言い訳が、嘘が苦しい。
ズキズキと胸に刺さる。
「嘘だろ!嘘だよな雅!!」
碧海が叫んでいる。
碓氷くんの方を向く。
碓氷くんは僕を見てはいなかった。
クラスメイトの反応を伺っているようにも見えた。
「やっぱりてめぇか!」
倒れている僕に海道くんが馬乗りになり頬を殴られる。
嫌な音が教室に響く。
「うっぐっ…。」
歯にあたって中が切れたのか口の中は血の味がした。
痛みに顔を歪めていると本当に神城がやったのか?と言う声が聞こえた気がした。
彼が碧海に問いかけている声が。
耳元で声がする。
僕にしか聞こえないように海道くんは告げる。
「お前…前の学校でいじめられてたんだってな……。」
僕の体が反応する。
嫌な思い出が脳裏を過ぎる。
「ここでは俺がいじめてやるよ。」
小さな声でそう呟くと彼は僕から離れた。
不敵な笑みを浮かべながら。
「わかった、もういいよ。許す。俺はお前がそんなことするやつに見えないし。」
「え…。」
「ただ、本当にやってた場合は許さないしもし、こいつに罪をきせているような奴がいたらそいつも許さない。」
海道くんはニヤニヤしながら僕を見ている気がした。
僕はくらくらする頭を抱えて立ち上がる。
「あ、り、がとう。」
心の中は恐怖で満ちていた。
噂で聞いていた。
彼にいじめられて学校に来れなくなった生徒が何人もいることを。
僕は俯いて下唇を噛んだ。
彼の笑顔が怖くて、仕方がなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 14