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振り回す感情
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寄り道したがっていた春一だけど、結局悠治に押しきられる形で、彼等の部屋でゲームをすることになった。
春一は不服そうだったけど。
因みに悠治と春一は同室だ。
1度鞄を置きに自分の部屋へと帰ったが、清都はまだ帰ってきてはいないようだった。
どうせどこかで楽しんでいるんだろうけど。
そこまで考えて頭には何故か先程の清都と大淵の姿が浮かんだ。
モヤモヤするような、気持ち悪いような、言い様のない不快感に襲われる。
そんな気持ちを抱えたまま悠治達の部屋へ行けば、案の定不思議がられた。
どうしたのか訊かれたが俺自身この訳の分からない気持ちを消化することができず、なんでもないと曖昧に笑って誤魔化すことしかできなかった。
それでもそれ以上踏み込んでくることがないのは2人の優しさなんだろう。
結局それからも2人はそのことに対して口を開くことはなかった。
悠治が手に入れたという最新のアクションゲームで交互に対戦し、程よく腹が減ったところで食堂に向かうことにした。
まだ少し早い時間だからか食堂はそんなに混雑しておらず、悠々と空いてる席に座ることができた。
各々食べたいものを注文し、料理がくるまでの間他愛のない話で盛り上がり、料理が運ばれてきてからはその美味さに舌鼓を打ちながらくだらない話をした。
食後のコーヒーを味わい、人が多くなる前に立ち去る。
部屋の前で別れ、カードキーをかざし"ピッ"と聞きなれた音と次いでガチャリ解錠したのを確認してからそのドアを開けた。
開けた先には真っ暗な空間が続いていて、ずいぶん長い間2人の部屋にいたことが窺える。
「ただいま」
なんの音も、気配もしない、ただ自分の声だけが小さく響く、どこか空しさが残る中、わざと大きな音をたて靴を脱ぎ捨てた。
そのまま廊下から共有スペースに繋がるドアを開け、暗いなか手探りでスイッチを探した。
カチリと聞き慣れた音、数秒後に明るくなる室内。
飛び込んできた光に目を瞑り、ゆっくり瞼を開けると見慣れた部屋。
そこは数時間前のままで。
「はぁ、今日は久々の授業で疲れたし、風呂でも入って早めに休むか」
誰もいない部屋で独りごちた。
風呂から上がってもやっぱりそこには無音の空間があって。
どことなく寂しい、空虚感のようなものを感じた。
だが俺にはその意味が解らない。
清都が部屋に帰ってこないなんていつものことで。
大層おモテになるあいつは毎夜違うチワワの部屋を渡り歩いている。
そこで何をしているかなんて言わずもがなだろ。
因みにチワワっていうのは本当の犬じゃなくて比喩だ。
なんか小さくてモフモフしてて、時々キャンキャン吠えるような奴等があいつの親衛隊にはいっぱいいる。
まぁ友人達曰く俺のとこも似たようなものらしいけどな。
あいつは兎に角節操がない。
小さくて可愛いのを見かけたらところ構わず声をかけ部屋に連れ込む。
何度その現場に居合わせたか。
思い出すだけで頭が痛くなる。
別に今あいつが誰と何処でナニをしてようが俺には関係ない。
関係ないと思うのに、いつまでたっても昼間の光景が残像となって脳裏に焼きついて離れない。
それは吐き気をもよおすほどのもので。
考えたくなくても考えてしまう思考に疲れてしまってのそのそと自室の扉を開けた。
意識を手放す間際、鼓膜は玄関ドアが開く小さな音を拾った。
ああ帰ってきたのか、今何時だ?とか頭の片隅でうっすら思ったが深淵まで墜ちた身体はピクリも動かなかった。
徐々に大きくなる足音。
そのまま自分の部屋に行くと思ったがそれは俺の部屋の前で止まった。
それから数秒間、それが動く気配はない。
なんだ?
どうした?
身体は動かずとも不思議なことに耳はその音を鮮明に聞き取る。
神経がそこだけに集中しているように、空気の音ひとつ逃さないように。
「・・・・・・・・・やまと」
だからだと思う。
普段のあいつからは考えられないような
消えてしまいそうなほどか細く小さな声。
意識が一気に覚醒した。
がばりと布団をはね除け飛び起きる。
でもその時にはすでに気配は消えていて。
なんだったんだ今の。
飛び上がった衝撃からか、予期しない声に動揺したからかドッドッドッドッと心臓が早鐘を打つ。
ポタリポタリと夏でもないのに汗が滴り落ちる。
それから眠ることなんてできるはずもなくて、気付けばカーテンの隙間からうっすらと朝焼けの光が射し込んでいた。
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