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帰る場所なんてない、そう言われれば何も言い返せない。家族も宛にできる人もいないため、帰るなどと言ってもまたあの空き家に戻るだけ。それだったらこのまま相手に従って家に居座るか。けれど、この人は何をするのかも全くわからない。
_僕は、どうすればいいの...、?
日記に書いてあった昔の人達は皆、僕に何かをして捨てて行った。
" _○月□日。5人程度の男の人に連れて行かれた。目当ては宝石だった。好き勝手やられて、宝石持って嬉しそうに帰っていった。 "
" _×月☆日。一人の高身長の男の人に会った。この人は宝石目当てだった。路地裏連れて行かれて、タバコの火を僕の肌で消したり、意味もなく殴られた。宝石持ち帰っていった。 "
" _?月!日。起きたら真っ暗な部屋にいた。手と足、首に鎖が繋がれていた。男の人のようで、好きと言われただけで何もされなかった。ただ、体を好き勝手触られて散々痛い思いしただけだった。 "
日記を読み返す度に出てくるいくつもの嫌な思い出。どうせこの人も同じなのだろう、と小さくため息を吐く。泣いたらそれこそうまく利用されてしまう。寝たらまた記憶消えて、うまく利用されて上書きされてしまうかもしれない。この人の前では油断など一切できないのだ。
「...、奏?」
「...、なんですか。どうせ貴方も......、っ」
" 貴方も他と同じ " 。そう言ったらこの人はどうするのか。怒って僕を殴り、捨てていくのだろうか。それとも、殺して、捨てていくのか。言ったら必ず捨てられる。そう確定する他、この人が何するかなど思いつかない。
「貴方も...、他と同じ、なんでしょ......、?」
「散々僕で遊んで、宝石を手に入れて、好きなのか知らないけど、僕が貴方を好きになるまでどうせこのままで、期待通りに行かなかったら即捨て。宝石だって、沢山手に入ればいいんでしょ?小さくても、多く手に入れればこれからだって暮らせるもんね。泣けば、気がすむでしょ...、宝石でも手に入れば...、もう、僕に用はなくなるでしょ......、?」
殺されたっていい、そう思いながら口から出た言葉はただ頭のどこかで思っていた事だった。捨てられるのが怖い、暴力振るわれるのが怖い、そんな本音など言えずにつらつらと並べた言葉たち。これを聞いた相手はどうせ怒って僕を殺すだろうと、そう思っては小さく笑う。
「...、僕、死ぬのか......、」
事故の時に死んでいたらこんなことにはならなかったのに、と後悔したりする。でも、相手の方を見れば、ずっと無言で此方を見ていた。ゆっくり口を開いたのを見、怒られるんだな、とうっすら涙を浮かべながら相手を見つめる。
「奏、本音言っていいんだよ?...、俺は宝石目当てでも、俺のことを好きになってほしいとかも一切思ってない。信じられないと思うけど...、。俺がこうやってここに連れてきて、こんな首輪とか色んなのつけてるのは奏にこれからずっと嫌な思いしてもらいたくないから。これ自体が嫌な思いだとは思うからもう外すけど。記憶が1日で消えるの聞いて吃驚したけど利用するとか考えてない。こんな誘拐犯とでも幸せを知ってほしいとか言わないから、嫌だったらあの家に返す。......、奏、ここにいるの嫌だよね。送るよ、もう会わないって誓うから。」
かちゃかちゃと小さな音を立てながら足と手に繋がれていた鎖が取れる。そして首輪も外された。ふと相手を見れば悲しげな表情を浮かべていた。どこか涙を堪えているようにも見えた。僕のせいでこんな顔させちゃってると感じ、どうしようかと迷った挙句何もできずに目線を落とす。
「......、僕には、居場所なんてないの。あの家も、僕の家じゃない。家族も、親戚も、頼れる人なんていない。学校だって行ってないし、一人でただ生きてた。」
「...、奏.........、?」
「監禁でも、暴力でも宝石目当てでもいい、から...。僕の居場所を頂戴...、?気分晴らしでもいい、暴力だって平気、宝石ならいくらでもあげる。貴方のしたいままに、して構わないから...、」
「...、殺さないし、捨てない。絶対。だから、俺とここにいて。何もかも俺がやる、奏は俺といるだけでいいから。」
全く相手のことを信用していない奏と、幸せを教えたい誘拐犯の生活がここから始まったのだった_。
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