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悪役令嬢の弟に転生したようです …3
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まず、ゲームがスタートするのは、主人公が王立学園の高等部の3年生になる年だ。
王立学園は年齢によってレベルが別れており、初等部、中等部、高等部とある。
前世のニホンと似たようなものだ。
その後、騎士団や軍幹部などの武官、官僚など文官、神官幹部などを目指す者は、専門学部へと通うのだが、それは実力のある一部の者のみとなる。
貴族などの裕福な家の者は安全面などの理由から、幼い頃は家で家庭教師に学び、中等部や高等部から入学したりする。
学園では、勉強だけでなく社交界でのやり取りを学んだりもするため、ほとんどの貴族が通っている。
寮も完備されているので、地方の貴族も通えるようになっている。
実力があれば庶民でも通えるが、貴族とのいざこざを避けるために別々の建物で学ぶようになっており、それぞれが顔を合わせることはほぼ無い。
主人公は始め、高等部の庶民棟に通っている。
その後、貴族の養子になる事によって、3年生から貴族棟に転入する。
ちなみに、ルシエルとミシェルは現在、中等部に週に2日のみ通っている。
高等部は、来年度入学予定である。
ゲームではミシェルと主人公は同級生だった。
つまり、ミシェルがゲームに巻き込まれるとしたら、あと3年もない。
主人公が誰を攻略するのか決めるのは、3年になってすぐの学園祭。
ここで誰とイベントを起こすかを知る事ができれば、どのルートへ進むのかが分かる。
もし、その場に遭遇できれば、の話だが。
「どうしよう……」
ルシエルは最初、ミシェルがアルフレッドと婚約するのを阻止しようかと思った。
けれど、聞いた話によると、発表はまだしないものの婚約は決定した後の事だった。
アルフレッド王子が現在高等部の2年生なので、卒業した後に発表するとの事だ。
--婚約はもう成ってしまった。
話を聞く限り、ミシェルは婚約に乗り気だし、ルシエルが口出せるような段階ではなさそうだ。
「何が『どうしよう』なの?」
その言葉にハッと顔を上げると、いつの間にか部屋に入って来ていたミシェルがこちらを見ていた。
「どうしたの?ノックしても返事がないし、寝てるのかと思えば、何か思い詰めてるみたいだし?」
「あー…うん」
まさか、ミシェルとアルフレッドをどうしたら別れさせられるかを考えていた、なんて言うわけにもいかず、ルシエルは口ごもる。
すると、ミシェルの後ろからジャックがひょいと顔を出した。
「ミシェル様の婚約が決まって、寂しいのですよ」
「えっ?……もう!ルゥったら!今日明日出て行くわけじゃないのよ?結婚してこの家を出るのは、まだまだ先の事だわ。うふふ」
ミシェルの婚約話をした後から、ルシエルの様子がおかしいと気付いていたジャックは、てっきりルシエルが拗ねているのだと思った。
目を合わせて笑い合うジャックとミシェルを見て、そんな単純な事じゃないのに、と思ったルシエルだったが、それに反論する事は出来ない。
「そう言えば……なんで二人は婚約する事になったの?」
ルシエルの知る限り、二人の接点はない。
ルシエル達の両親は恋愛結婚推奨派なので、政略結婚とは考え難い。
「うーん。それが、私にも分からないのだけどね。お父様の話によると、向こうからお話をいただいたのよ」
「そうなの?でもなんで?なんでミィが…」
「それは、ミシェル様が素晴らしいご令嬢だからでしょう」
ルシエルの呟きをヤキモチと勘違いしたジャックは、笑いながらそう言った。
「アルフレッド殿下のお歳にも合いますし、身分も申し分ございません。その上、ミシェル様は天使と言われる容姿の持主でございますから。王族の方の目に留まるのが当然でございますよ」
「まぁ!ジャックったら!」
楽しそうな二人とは裏腹に、ルシエルの気持ちは晴れない。
「ミィは?ミィはどうして婚約をお受けしたの?父上や母上は、恋愛して結婚しても良いって言ってたじゃないか。無理して殿下と結婚しなくても…」
ルシエルのその言葉に、ミシェルは優しく笑った。
「ルゥ。私ね、いつか結婚してここを出て行く身でしょ?それなら、なるべく高貴なお方が良いと思っていたのよ?相手が王子様だなんて、夢のようじゃない?それに私……恋がどう言うものか、よく分からないのよ」
そう言いながら、ミシェルは肩を竦めて見せた。
「ミィ……。でも、ミィ、恋愛物語、好きでしょ?恋が分からないなんて…」
「物語と現実は別物だわ。……それに、アルフレッド殿下は見目も良くて素敵な方らしいじゃない?何より、王子様よ?それこそ物語みたいだわ。ね?きっと私、好きになれるわ」
「でも……」
さらに何かを言おうとするルシエルを、ミシェルが言葉で遮る。
「ねぇ?ルゥは、人を好きになった事、ある?」
「……」
ルシエルは答えられない。
振り返っても前世に失恋した以来、二次元を除いて、人を好きになる事はなかった。
ルシエルの沈黙をヤキモチのせいだと思っているミシェルとジャックは、さらに微笑みを増した。
「結婚は早い者勝ちだわ!良い相手ほど、すぐに売れていっちゃうのよ?迷ってる暇なんてないわ!ねっ?」
その力説がとてもミシェルらしくて、ルシエルは笑った。
笑うしかなかった。
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