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アルフレッドとレオン …2
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それから、レオンは必死で頭の引き出しを漁った。
立ち止まっているアルフレッドを一歩でも前に進められるような、背中を押せるような言葉を探して。
そしてふと、興味本位でパラパラと目を通した事のある恋愛小説を思い出したのだ。
「アルフレッド殿下に嫁がれる方は、きっと、幸せです」
アルフレッドが、何を言っているんだ?と言わんばりの目をレオンに向ける。
「現国王様は恋愛の末、今の王妃様と結ばれたとお聞きしました。そのため、王子様方にも政略結婚より恋愛結婚を勧めているとか?」
「……あぁ。そうだな」
再び、レオンに訝しげな目を向けるアルフレッド。
「ならば、探せば良いではないですか?そう言う女子を。御心を寄せることの出来る御方を。殿下はおそらく、好いた相手にしか反応しないのです。そう……きっとそうなんです。……おります!殿下の運命のお相手は、必ずおります。そうやって殿下に見初められる御方は、幸せに違いないのです!だって、運命の相手ですから!」
小説で得た恋愛とはなんぞやの知識を、レオンは必死に言葉にした。
恋愛小説で読んだ、出会って恋に落ちる運命の二人。
そういう相手がアルフレッドにも現れると信じて。
アルフレッドの眉が、ピクリと動く。
それにレオンは気を良くして、言葉を続ける。
「殿下が自分だけを愛してくれる。それはとても幸せなことでしょう?殿下と御相手の方の仲睦まじさが、今から想像出来そうです」
アルフレッドの目に、仄かに光が灯る。
そんな相手がいるだろうか、と。
心も身体も求めたくなるような相手が。
が、すぐにその光は消えた。
「……だけど、そんな相手がいるという保証はない」
また、ウジウジし始めたアルフレッドにレオンは苛立ちを感じた。
「そのような事……分からないではないですか!この国に女はごまんとおります。世界を見渡せば星の数です。それに殿下はまだお若いのです。これからきっと見つかります。きっと……必ず出会えます!お手伝い致します!」
普段、冷静沈着なレオンが、拳を握って熱弁したことにアルフレッドは驚いた。
そして、それが自分の為だと気付くと、胸が熱くなるのを感じた。
アルフレッドは、自分がこんな事で悩んでいるのが恥ずかしかった。
性の悩みなど、誰かに言えば馬鹿にされると思っていたから誰にも言えなかった。
時が解決してくれるとは思っていたが、王太子として今まで頑張ってきた反動か、折られたプライドはなかなか自己修復してくれなかった。
アルフレッド自身、分かっていた。
別に不能と言う訳ではないのだから、そこまで悩む必要はないのだ。
たまたま、初めてが上手くいかなかっただけ。
けれど、他人に否定される事の怖さをこのようなきっかけで知り、そこからどう立ち直っていいのか分からなかったのだ。
今回、しつこく様子を伺いに来るレオンに折れて、嫌われる事を前提で、悩みを打ち明けた。
するとどうだろう。
レオンは馬鹿にしたりはせずに、真剣に話を聞いて、彼なりにアルフレッドを救おうとしてくれている。
それは一見とても微力な後押し。
しかし、この様に慰めてくれる仲間のいないアルフレッドにはとても大きな後押しになった。
「……そう、だな。そうだよな。諦めるのはまだ早い」
ハハッと眉を下げて笑ったアルフレッドに、レオンは胸が締め付けられた。
いつも自身たっぷりだった王太子のアルフレッドが、こんな事で悩んでいたなんて。
王太子と言う雲の上の存在ではなく、自分と同じ、ただの男に見えた。
そして、そんな彼を隣で支えたいと思った。
それから、アルフレッドとレオンは急速に仲良くなった。
高等部に入ってすぐ、アルフレッドはレオンに側近として支えてくれるよう望み、レオンも進んでそれに従った。
そしてアルフレッドは、気になった女生徒と片っ端から付き合うようになった。
仮面パーティに出席するようになったのもこの頃からだ。
仮面パーティは、お互いの同意があれば、休憩室とは名ばかりの部屋で密通する者たちもいた。
アルフレッドも身分を隠し変装し、それを利用して……結果、女と事を成すことが出来るようになった。
と言っても、自分でコントロール出来るようになったためである。
自分で勃たせて致すと言う、自慰とほとんど変わらない行為。
何人もと関係を持ったが、心が動かされたり、体が反応したりするような女とは出会えなかった。
学園では、アルフレッドは女生徒達と意図して距離を近く接していたため、影でタラシだと言われていた。
アルフレッドのそういった行動を、レオンは苦々しく思いながらも、止める事は出来なかった。
--そんな過去の事を思い出したレオンの心は、どんよりと重くなった。
初めてミシェルの事を聞いた時は自分の事のように嬉しくなった。
ついにアルフレッドの運命の相手が現れたのだと。
しかし、それは間違いだったと言う。
それがどう言う意味なのか、レオンには分からなかった。
「アルフレッド様、間違えた……とは、どう言う事なのですか?ミシェル様は、心動かされるお相手ではなかったと?」
焦るあまり、何かを勘違いして、ミシェルを選んでしまったのだろうかとレオンは思った。
黙って俯くアルフレッドを見て、レオンは無意識のうちにポツリと呟いた。
「なぜ、出会えないんだ……」
レオンは信じたかった。
アルフレッドの心も身体も満たしてくれる相手が必ずどこかにいるはずだと。
そんなレオンの呟きに、アルフレッドは顔を上げた。
「いや、出会えた」
遠くを見ながら、アルフレッドがフッと笑った。
「……え?」
レオンは意味を理解できずに、ポカンと口を開けた。
そんなレオンの顔を見て、アルフレッドは眉を下げて笑った。
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