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突然の辞令 …2
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「えっ?アルフレッド様が留学?」
「はい。新学期からという事で、急ぎ出立します。3日後にはこちらを発つ予定です」
アルフレッドが留学の知らせを受けた2日後。
ルシエルの家にレオンがやって来た。
アルフレッドの留学を伝える為である。
「みっ、か……」
「はい。インディール国まで馬車で二週間かかりますからね。それを考慮すると、なんで今?と言う思いもいたしますが……」
突然のその知らせに、ルシエルは頭が真っ白になった。
せっかくアルフレッドと結ばれたと言うのに離れ離れになってしまう事実を、受け入れられなかった。
「え、と。あの……いつまで?」
「交換留学は今学年いっぱいの予定です。つまり6月……遅くても7月には戻って来られるでしょう」
「7、月……」
「はい。……実は、この事はアルフレッド様ご本人からルシエル様に伝えたかった様なのですが、今は準備などに追われておりまして、城から出る事が出来ず……」
ルシエルの頭に、ゲームの事が過ぎる。
アルフレッドが留学していたかどうかは、ゲームの設定では分からない。
もしかしたら、留学したからミシェルと仲違いをしていたのか?いやいや、今のミシェルは別人だしレオン様と付き合っていて--と、ルシエルの頭の中が忙しなく回る。
なんにせよ、アルフレッドの忙しさを考えれば、このまま会わずに分かれて、次に会えるのは7月になるのだろう。
留学中は会う事は叶わないだろうし、手紙も制限される。
そんな事をレオンが申し訳なさそうに話す。
(アルフレッド様が戻って来て、ゲームのマリーと出会うまで……3ヶ月くらいしかない。それまでに、僕は気持ちを切り替えられるのか?……いや、そもそも、アルフレッド様が戻って来た時に、まだ僕の事を好いてくれているのだろうか……)
「……ま、……えるさま?ルシエル様!」
「えっ⁉︎あっ、ごめんなさい。何ですか?」
ルシエルの様子を見たレオンが悲しそうな顔をした。
「お気持ち、お察しします。……アルフレッド様も、大層悲しんでいらっしゃいました。あちらに行く前に、一度でも会う機会を作りたいと仰せです」
「え?でも、準備で忙しいんじゃ……」
アルフレッドが自分と会いたいと思ってくれている事で、ほんの少しルシエルの気持ちが落ち着く。
「えぇ。そうなんですが……何とか時間を作ると奮闘しておりますので、出来たらその時は都合を合わせて頂ければと。私の方でも、色々調整してみます。ただ、会えても、短い時間になるかもしれませんが……」
レオンが済まなそうに目を伏せた。
「いえ。一目だけでも結構です。よろしくお願いします」
ルシエルはそう言って頭を下げた。
「ルシエル様……」
その様子を見たレオンは辛い気持ちになった。
想いが通じ間もない二人が、国王陛下の……アルフレッドの父の采配で、離れ離れになる事に対して憤りを感じずにはいられなかった。
それは決して口にする事は出来ないが。
そして、アルフレッドの旅立ちの前日の夕刻。
レオンから突然ルシエルの元に、王宮の中庭へ呼び出しがあり、ルシエルは慌てて出向いた。
なぜか家族から急き立てられながら準備をし、母からは「今日は帰ってこなくても良いわよ」と言われたのだが、ルシエルはその意味を理解する間もなく、慌てて家を飛び出した。
「ルシエル!!」
「アルフレッド様!」
王宮の中庭。
二人で植えたラベンダーの前で落ち合った二人は、人目もはばからず抱き合った。
と言っても、レオンが気を利かせて、人払いをしていたが……
「すまない。突然、留学する事になって。……次に会えるのは、留学が終わってから……夏になってからだな。もっと早くに伝えたかったが、中々時間が取れず……」
「いえ。レオン様から伺いましたから。それにしても、突然の事で……何と言えばいいか」
「いや。……本当にすまない」
「どうして謝るのですか?」
「……」
ルシエルの問いかけに、アルフレッドは何も答えられなかった。
今回離れ離れになる理由は、自らの父のせいだとアルフレッドは思っていた。
自分たちを祝福していない人間が身内にいると知ればルシエルは悲しむだろうと、アルフレッドはその事を口にする事は出来なかった。
「アルフレッドさま?……お疲れですか?すみません。お忙しい中、私のために時間を作っていただいて……」
「いや。私にとって今一番優先したいのはルシエルだよ。……レオン、今夜はもう予定は無かったな?」
「はい。……邪魔が入らなければ、ですが」
レオンの何か含んだような物言いに、アルフレッドは顔をしかめた。
「そうか。……では、ルーズベルト家へ、今日はルシエルは帰らない旨、連絡してもらえるか?」
「えっ?」
アルフレッドの言葉に、ルシエルは驚いた。
今夜はずっと一緒に過ごせるという嬉しさと、明日旅立つアルフレッドの邪魔をして良いのかという申し訳なさとで、心が揺れる。
「……嫌か?」
アルフレッドが真面目な顔でルシエルを見た。
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