アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
王家の兄妹 …2
-
すっかり冷めきった紅茶を飲み干したヴィヴィアンは、言葉を選ぶようにして口を開いた。
もし、先日の一件を他の人が見ていたら噂になるだろうと。
そうなってしまえば、いつ他人の口からアルフレッドに伝わるか分からない。
ただでさえ、イーサンがルシエルと仲良くしている事は周知の事実だ。
先日のイーサンの行動からして、今後それが過激な物にならないとは言い切れない。
むしろ今後、人目もはばからずルシエルに迫ることも考えられる。
現に、同じ園芸部の生徒がいる前で、ルシエルを抱きしめた(ように周りからは見えた)のだ。
「つまり、他人の口から兄上に伝わる前に、伝えてしまおうと?」
「えぇ、そういう事ですわ。包み隠さず伝えるべきです」
「しかし……遠く離れた地で、恋人が狙われているなどと聞いたら……辛いのではないだろうか?」
エドワードは、アルフレッドを自分に重ねていた。
もしかしたら今のアルフレッドとルシエルの状況は、自分の身で起こっていたかもしれないからだ。
ようやく自分の手に落ちてくれた可愛い恋人の顔を、エドワードは思い出した。
「アルフレッドお兄様とご自分を重ねてらっしゃるの?」
「あぁ。……元々私が行く予定だったのだからね」
「ならば、エドワードお兄様の方が、どうすべきかご存知なのではなくて?」
ヴィヴィアンが優しく笑いながらエドワードを見た。
確かに、とエドワードは頷く。
もし自分の恋人が誰かに狙われていたら……きっと自分なら知りたいだろう。
遠くの地で何も出来なくても……
いや、何かできるかもしれない。
相手の男を牽制するとか、恋人を寂しがらせないように手紙や贈り物を増やすとか……。
「そうか。そうだな。……ありがとう、ヴィー」
来た時とは違うスッキリとしたエドワードの笑顔に、ヴィヴィアンも笑顔を返した。
「どういたしまして。……ふふっ。エドワードお兄様も、立派な"ルシエル様推し"ですわね」
「推し?」
「えぇ!アルフレッドお兄様のお相手は、ルシエル様しかおりませんわ。……まだ、ここだけの話なのですが、ルシエル様を王妃にするのです!!」
ミシェルがグッと拳を握った。
その発言に、エドワードは一時動きを止めた。
「おう、ひ?」
「ええ、そうよ」
「いやしかし、兄上とルシエルは結婚でき」
「出来るようにするのですわ!えぇ!してみせますとも!依存は、ございませんわよね?エドワードお兄様にはたくさん動いてもらうことになるでしょう。しかし、今ある常識を変えるには、犠牲はつきものですもの。ね?ね?」
「う……あぁ」
エドワードの方に身を乗り出したヴィヴィアン。
その勢いにエドワードは飲まれるしかなかった。
「この話には、お母さまも関わっていますの。だいぶ地固めも進んでおりますのよ。ふふふ……」
「母上も?」
ヴィヴィアンは考えていた。
同性結婚が認められれば、今ある憂いは何もかも解決するのに、と。
だから、影ながら動いているのである。
自分の出来ることを、コツコツと。
「うーん。せっかくここまで来たのですもの。イーサン殿下などに邪魔されては堪りませんわ……。ここはいっそ、うちの諜報部員を動員して……いえ、暗殺部隊かしら?ううん。ブツブツ……」
「ヴィ、ヴィヴィアン?」
「あ。アルフレッドお兄様にはまだ内緒にしてくださいませ?まだ……計画は途中なのだから。まぁ、詳しくはまた相談いたしますわ。うふふ」
「あぁ。……分かった」
ヴィヴィアンと母が結託したのなら、父も……この国の王も勝てないだろう。
そう考えたエドワードは、大人しくその流れに乗ることにしたのであった。
その後、エドワードはアルフレッドへと手紙を出した。
辛い内容だけでは忍びなかったので、王城の中庭のルシエルの薔薇を褒めて、それをドライフラワーにして添えた。
その手紙を受け取ったアルフレッドが、イーサンへと怒りの闘志を燃やした事は言うまでもない。
そして、ミシェルもまた、エドワードとは別にアルフレッドに手紙を出していた。
ミシェルなりに得たルシエルやイーサンの噂や、今後についての相談が書かれていた。
手紙の最後には"早く帰って来てくださいませ!"と力強い字が添えてあった。
ミシェルの手紙を受け取ってから、アルフレッドは母国へと早く帰れる方法を模索するのであった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
102 / 166