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ゲーム補正? …3
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ミシェルには、最近気になって仕方のない女がいた。
マリエ・シンプソンという編入生である。
初めに目に付いたのは、その人となりだった。
思った事はすぐ口にして、感情は包み隠さず出す。
貴族には、いないタイプである。
誰にでもフレンドリーで可愛らしい笑顔が印象的だった。
最初の頃は、ミシェルは気にも留めていなかった。
まぁどこかのお茶会で会えばそのうち仲良くなるかもしれない、くらいの感覚である。
マリエはミシェルが気にかけるような身分でなかったのも一因である。
マリエが貴族らしくない振る舞いをしていても気にならなかった(いつかそれらしくなるだろうと思っていた)し、誰と仲良くしていようと興味のない存在だった。
ところがある日、気付いたのである。
マリエがやたらとミシェルを見ている事に。
ミシェルは見目や所作、どれを取ってもとても美しい。
そのため他人からの視線を受ける事に慣れており、マリエの視線もその一つとして受け流していた。
しかし、その視線が好意的ではない物のような気がした時から、ミシェルはマリエが気になり出したのである。
(あら?私、あの子に何かしたかしら?)
しかし、妬みの視線も慣れっこのミシェルは、すぐにそれも気にならなくなった。
そんなある日の昼休み、マリエが突然ミシェルに声をかけて来たのだ。
「あの!ミシェル様ですよねっ?」
「……えぇ、そうだけど?」
何事!?と、クラスの生徒達がざわついたのを、本人達は気付かない。
本人達に自覚はないが、クラスの中でミシェルは女王様であり、マリエは人気があるにしても新入りかつ身分が下の者なのだ。
その新入りが今から何をやらかすのだろうかと、大いに注目を浴びた。
「ミシェル様って、お美しいですね!」
「……ありがとう」
マリエの発言に対し、ミシェルは素っ気なく応えた。
褒められることも日常茶飯事だからである。
「そんなにお美しいミシェル様なら、とてもステキな婚約者様がいらっしゃるんでしょうね!」
全く悪気のない笑顔で、マリエが胸の前で両手を組みながらそう言った。
マリエの爆弾発言にクラスの全員はヒヤヒヤである。
ミシェルは次期王妃と噂されていたが、なぜか王太子との婚約は成らず、その側近と親しくしているようだという事は誰もが知っていた。
それを、来たばかりのマリエが知らないのは当然であったが、まさか本人にそういう事を聞くとは!と誰もが戦慄したのである。
「貴方、行って教えてあげなさいよ!」「お前止めて来いよ!」というような呟きがあちこちから聞こえる。
その呟きを無視してミシェルはゆっくりとマリエに微笑んだ。
彫刻のように美しい、笑みであった。
「……えぇ。婚約はまだなのですが、親しくしている殿方はおりますわ。とても美しくて優しくて知性にあふれた男気ある方なのですの。オホホホホ!」
ミシェルの氷の笑みを、そうとも気付かず、マリエは頬を染めて「きゃぁ」と笑った。
「まるで王子様ですね!」
マリエのその発言に、教室内が一気に固まった。
ミシェルはそんな事お構い無しに、微笑みを返す。
「えぇ、そうね。王子様のようだわ」
そのミシェルの返事に対してマリエが口を開いた瞬間……
「マリエ様!」
そこに突然、一人の女生徒が割って入った。
マリエの友人の男爵令嬢である。
「ほら、突然そのような事をおっしゃって!ほ、ホホホ。ミシェル様も困ってしまいますわ!ねっ?さ、あちらに!あちらに参りましょう!ミシェル様、失礼致します」
友人に引きずられるようにしてマリエが教室を出ると、教室内はいつもの喧騒を取り戻した。
「今の、何だったのかしら?」
ハンナがミシェルの側に来てそう言った。
「さぁ?……あの子の考えてる事なんて、私にはサッパリ分からないわ」
ミシェルはそう言いながら、マリエが出て行ったドアを眺めた。
それから暫くしてからである。
ミシェルの耳に、マリエとアルフレッドの噂が聞こえてきたのは。
さらに、そのうち身につくだろうと思っていた貴族としての振る舞いも、全く改善されているようには見えなかった。
「貴族とはどういうものか、教えて差し上げねばならないわね」
マリエは、アルフレッドが普通に声をかけて良い相手ではないと知らないのだろう。
貴族の何たるかを知れば、アルフレッドにちょっかいをかけるのはやめるだろう。
そうミシェルは考えた。
もちろんその根底には、ルシエルの恋人にちょっかいかけてんじゃねーよ、という思いがあったのだが。
その後、ミシェルが何度か改善を試みようとしたマリエの態度であったが、マリエ本人はその場では受け入れたような態度を見せても、全く行動に反映される事はなかった。
マリエのその態度がまるでケンカを売られているようだと、ミシェルは感じた。
そして堪忍袋の尾が切れたミシェルが、マリエへの指導を厳しくしたタイミングで、その場をルシエルに見られてしまったのである。
ルシエルに何もしないように言われたが、ケンカを売られれば黙っているミシェルではない。
自分から手を出すつもりはないが、向こうから手を出された場合は、ルシエルの言うことなど聞けない。
「何にせよ、アルフレッド様にこれ以上悪い虫が近寄らないようにしなければ……」
そう呟いたミシェルは、これから忙しくなるわよ、と気合いを入れるのであった。
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