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ゲームと現実 …3
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「ほう……中庭で?殿下とマリエ・シンプソンは何をしていたんだ?」
ランバートの質問にフィリップは「さぁ?」と首を傾げだ。
「でも、彼らが原因で泣いたんだろう?反論しないのがその証拠だ」
ランバートとフィリップの視線を感じたが、ルシエルは顔を上げることはできなかった。
ルシエルが泣いていたこともアルフレッドとマリエが原因で泣いたということも信じられなかったランバートだったが、ルシエルの様子にその考えを変える他なかった。
「……まぁ、仮にルシエル君が二人を見て泣いていたとしてだ、それがマリエ・シンプソンを虐めていたと言う証拠にはならないだろう?」
「それはそうだが……でも嫉妬したという理由にはなる」
フィリップの言葉に、ランバートは大きくため息をついた。
「まぁ、言いたいことは分かった。……が、それで?お前は何がしたいんだ?ルシエル君が殿下とのことでマリエ・シンプソンを虐めていたとして?騎士の権限で取り締まるのか?たかが虐めくらいで?」
「たかが?そんな簡単な問題じゃない。俺が聞いたのは、ルシエル君とその姉のミシェル嬢が二人してマリエを虐めているということだ!卑怯だろ?貴族が二人で一人の元平民女性を虐めるなど」
「は?待て待て……」
熱く拳を握ったフィリップの言葉をランバートが遮った。
「いや、黙っていられん。自分の姉にまで悪事を背負わせるなど」
「おい!」
ランバートが「バン!」と大きな音を立ててテーブルを叩いた。
「お前、それをどこから聞いたのか分からんが、ルシエル君とミシェル嬢はお前の考えているような姉弟ではない」
「しかし」
「仮に、仮にだぞ?ルシエル君達がマリエ・シンプソンを虐めたとして、何の問題がある?」
「…………は?」
「お前は殿下とマリエ・シンプソンがどんな仲だと思っている?」
「……良い仲だと聞いた。付き合うのも時間の問題だろうと。だからルシエル君は慕っていたアルフレッド殿下を取られそうになって虐めた。……そうだろ?」
ルシエルはもう何をどこから否定していいか分からず、ずっと顔を上げることが出来なかった。
何より、ミシェルの名前が出た辺りから体の震えが止まらなくなってしまったのだ。
ミシェルが虐めているということは嘘にしても、それが"事実"として噂で広まっていることを知り、これからの未来を想像して恐ろしくなったのだ。
そんなルシエルの様子をランバートは不思議に思いながらも、その頭の上に優しくポンと手を置いた。
「お前ら、別れたのか?」
ランバートからの問いかけに、ルシエルは答えることは出来なかった。
頭が混乱していたし、その質問の意味が全く分からなかったからだ。
「ん?……あぁ、そうか。ルシエル君は知らなかったんだな。私が"知っている"と言うことを」
ランバートが今度はルシエルの肩をポンポンと叩いた。
「私は知っていたよ?殿下と君の仲を。……まぁ、殿下に協力させられたと言うかなんというか」
後半はゴニョゴニョした言葉だったのでルシエルとフィリップには届かなかったが、前半部分はルシエルの顔を上げさせるのに十分な内容だった。
「えっ……と、あの……知ってる、って?」
「大丈夫。誰にも言ってないし、何より、言ったら私の人生終わるからな……で、殿下とは別れたのか?」
ようやくランバートの質問の意味を理解したルシエルは顔を真っ赤にして小さく首を横に振った。
「だよなー。……というわけだ、フィリップ。あ、分かってるだろうが、他言無用だからな?」
そう言いながら、まるで「話はお終い」と言わんばかりに、ランバートは椅子の背に寄りかかって紅茶のカップを手に取った。
「いや、なにが"というわけ"なんだ?」
フィリップが、訳がわからないといった風に眉間にしわを寄せた。
「あ゛?お前は、殿下が浮気をするような人物だと思うか?」
「……は?……いや……」
ランバートが紅茶を啜る。
フィリップはアルフレッドのことをよく知らないので何も答えられなかった。
というより、例えそう思っていたとしても王太子のことを浮気するような人物とは口が裂けても言えないが。
「私は殿下が15歳の時からの付き合いだが……殿下は女を途切らせたことはない。今も特定の相手がいることは本人から聞いて知っている。そんな殿下だが、女を掛け持ちしたりするような場面は見たことはない。まぁ、なにより、今の相手は特別らしくてな。他の女は目に入らぬようだ。ククッ。惚気を聞かされるほどだからな」
ランバートの言葉に、ルシエルは再び俯いた。
今度は、顔を真っ赤にして。
「それはつまり……殿下とマリエは特別な関係ではない、と?」
「そういう事だ。分かったか?」
ランバートは再び紅茶を啜った。
「いや、しかし、それがどうした?それはルシエル君の無実を証明することにはなるまい」
フィリップの言葉に、ランバートは大きくため息をつきながら、カップをソーサに戻した。
「分からないのか……これだから脳筋は……」
ランバートの言葉に、フィリップは明らかに怒りを露わにした。
「いいか?お前のために順序立てて説明するからよく聞け?まず、アルフレッド殿下が付き合ってる相手は、このルシエル君だ」
「………………は?いや、まさか」
フィリップがルシエルを凝視した。
頭頂部に視線を感じて、ルシエルは動くことが出来なかった。
「黙って最後まで聞け。で、先ほどの話だ。殿下は決して二股するような人柄ではない。というか、立場上する訳がない。それは分かるな?そして、さっき本人から聞いただろう?ルシエル君はアルフレッド殿下と現在付き合っている。別れてない。だからマリエ・シンプソンと殿下の間に何かあるとすれば、それはマリエ・シンプソンからの一方的な好意によるものだ。つまり、横恋慕だ。……ここまでいいか?」
「え?あぁ。いや……うん。まぁ、その。アルフレッド殿下は別れているつもりなのに、そこのルシエル君が未練がましく付きまとって」
「それはない」
ランバートがフィリップの言葉を遮った。
「アルフレッド殿下はずっとルシエル君一筋だよ。殿下に誓って嘘はない。なにより、王太子殿下という立場の方が、人間関係においてそんな曖昧な状態を作る訳がなかろう」
実はアルフレッドがルシエルと学園の温室で会う時、ランバートに手を回していたのだが、それはランバートのみぞ知ることである。
「ルシエル君がマリエ・シンプソンに嫉妬して何か行動を起こしたとして、だ。悪いのは誰だ?恋人に横恋慕する平民……いや、元平民だが……を、貴族が諭して何が悪い?そこにルシエル君の姉が同調して何が悪い?」
「それは……いや、しかし、マリエは殿下とルシエル君の関係を知らなかったのだろうし……」
なぜか自分の意見を曲げないフィリップに、ランバートは再び大きなため息を吐いてみせた。
「フィリップ。お前、どうしてそんなにマリエ・シンプソン側の肩を持つんだ?」
ランバートのその言葉に、フィリップは暫し無言になった。
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