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マリエ・シンプソン …4
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「やった!……やったわ!!」
ルシエルが衛兵たちにどこかへと連れて行かれるのを見て、マリエは小さくガッツポーズをした。
これでルシエルはゲームから退場だ。
この後、ミシェルであれば修道院行きになったが、ルシエルもそれと同様に追放されるのであろうとマリエは考えた。
どんな風に断罪されるのか見ものであるが、ゲームではその詳細は出てきていない。
状況を説明するテロップと、捕らえられるミシェルらしきシルエットのスチル一つだけである。
その後は、マリエのハッピーエンドまっしぐらだ。
アルフレッドの誕生日会でお姫様のようなドレスを着せられたマリエは、アルフレッドにエスコートされ、ダンスを踊り、皆の前でアルフレッドから愛を誓われるのだ。
堪らず笑いをこぼしたマリエに、ジョルジュは首を傾げた。
「マリエ?……どうしたんだ?」
ジョルジュの言葉にハッとするマリエ。
「あ、ううん!なんでもないの!そ、それにしても、助けてくれてありがとう!」
そう言って、マリエはジョルジュの胸に飛び込んだ。
「っ!いや……怖かったろう?それにしてもアイツ、何考えてるんだ!!マリエが心を込めて作った薔薇を!!……ケガっ、ケガはしてないかっ?」
「う、うん。私は、だいじょーぶ」
「そっか」
「こ、怖かったぁ」
そう言って、しばしの間二人は抱き合った。
ジョルジュの腕の中でマリエは我慢できずに、ニヤリと口元を歪めた。
そんな二人を少し離れた場所からフィリップが見ていたが、二人はそれに気付かなかった。
衛兵によって現場検証が行われた後、マリエは事情を聴取された。
……もちろん、ゲームのシナリオに沿うような内容を答えた。
「えー、簡単に言うと、ルシエル・ルーズベルト殿に嫉妬され、その腹いせに花壇を荒らされたと。……そう言う事で宜しいでしょうか?」
「はい。……グスッ……そうです」
ハンカチで目を抑えながらマリエが答える。
「因みに、なぜ彼をバラ園に呼んだのですか?……いえ、すみません。明日の大事な日を控えての事件ですからね。細かい事ですが確認したく」
衛兵が事務的にそう聞いた。
マリエは少し俯いてから、こう答える。
「はい。……明日のことで忙しく……私がこの場から離れられなかったので、ルシエル君に来てもらったんです。……それが、まさか、こんな事態を引き起こすなんてっ。う、う……申し訳、ありません」
「そうですか。……いえ、私に謝られても困ります。まぁ確かに、この一画の担当者としての責任は問われるかもしれませんがね。ただそれは、ここではなんとも言えません」
「……はい」
「あと、個人的な興味で申し訳ないですが、なぜ貴女がこちらの花壇を担当されておられるのか?ここは城下の西区の花屋が任されている筈ですが?」
少しの間、マリエはゲームを思い出した。
そして、思い出した事をそのまま答える。
「はい。その花屋は私の生家なのです。実は母の体調が悪く、母の代わりを私が申し出たのです。それに、ここに植えてあるのは私の開発したバラでして……」
「そうでしたか……とりあえず、貴女への質問はここまでとします。……部下に家まで送らせましょう。おい、誰か」
「あ、あのっ」
衛兵の言葉を遮って、マリエは立ち上がった。
「何か?」
「あの、荒らされた花壇なんですけど、明日までに手入れが必要ですよね?」
「詳しいことは分からないが……まぁ、そうでしょう」
「あの……私、予備のバラも育ててるんです!だから、私に手入れさせてもらえませんか?」
「ふむ……分かりました。ただ、私には許可は出せませんのでバラ園の管理者の指示を仰いでください。では、行ってください。……ジョルジュ・フランシス殿にはいくつか質問がありますので、貴殿は残っていただけますか?」
マリエと一緒に立ち去ろうとしたジョルジュに対して、衛兵がそう言った。
「明日ではダメなのか?」
ジョルジュが、マリエに気遣わしげな目線をやりながらそう言うと、衛兵は静かに首を横に振った。
「申し訳ありません。事の次第を王妃陛下にも早々にお伝えせねばなりませんので。ご協力お願いします」
王妃の名前を出されては我が儘を通すわけにもいかず、ジョルジュは仕方なく頷いた。
「分かった。……マリエ、何かあれば、私を頼ってくれ」
「はい。ジョルジュ様、ありがとうございます。……では、失礼いたします」
頭を下げて、マリエは庭師のいる管理棟へと歩き出した。
歩きながら、マリエはニヤリと笑った。
これで荒らされた花壇を元通りにすれば、マリエの計画は完璧だ。
これで明日の誕生日会で、ルシエルに愛想を尽かしたアルフレッドからマリエはエスコートされる事になる。
「うふ……うふふふ」
翌日の"ハッピーエンド"を思い描いて、マリエは笑顔を抑えることが出来なかった。
庭園の管理棟についたマリエは、事情を説明し、新たなバラを取りに生家に戻るのであった。
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