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Number:17
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「結局見失っちゃったじゃないですか…」
綾瀬がしばらく駄々をこねたせいで2人がどこへ行ったのか全くわからなくなってしまった。
「ごめん。」
普段の余裕そうな表情とは正反対にやってしまったと言わんばかりに引きつった顔でぼそりと謝罪する。
「あの、綾瀬さんはあいつのこと好きなんですか?」
「うん。龍は僕を拾ってくれたからさ」
少しずついつもの平静を取り戻したのか表情が和らいでいく。
「ふーん。なるほど…」
「龍は僕の親みたいな存在なんだよ」
「じゃあ恋愛の好きじゃなくて親目線で好きみたいな事ですか?」
綾瀬は頷こうとしたが、ハッとしたように首を振り早紀に近づく。
「それだけじゃないから!恋愛の好きも入ってるから!」
苦笑しつつも早紀は頷き、1歩後退りした。
早紀はこの人にもこんな一面があるんだな、なんて思いながら見失った龍のことは諦めて大人しく家に帰った。
「ただいまー」
綾瀬がドアを開けると、そこには既に帰ってきていた龍の姿があった。
「よう、遅かったな」
何か勘づいているような様子で龍は2人を見た。
「「あ!!」」
2人は帰ってくるまでに元に姿に戻るのを忘れていたのだ。
つまり、龍にはすべてバレている。
「お前、外出禁止のはずだろ?」
鋭い目つきで早紀を見るなり龍は早紀の腕を引いて自室へ向かった。
「ちょ、龍!なんで早紀だけ?!」
「ツッコミどころそこなんですか!?助けてくださいよ!」
綾瀬は龍を追いかけようとするが、あっけなくドアを閉められてしまい廊下に取り残された。
「龍~……」
悲しげに声を上げる綾瀬を無視し、ドアの鍵を閉めた龍は1歩ずつ早紀に近づいていく。
「俺が女といるとこ見たのか?」
「え…見てないけど…」
見られたらまずかったのかな、なんて思いつつもここは見てないと言っておく。
「見たよな?俺は今のお前みたいな格好してる奴見たぜ?」
「っ……見たら駄目だったのかよ…?」
できるだけ龍の顔は見ないように、女装したままの自分の顔も見せないように俯いたまま会話を続ける。
「俺に彼女がいると思われんだろ」
「え…?彼女じゃないの?あ、じゃあ知り合いか」
「知り合いでもねぇよ。あの女は次のターゲットだ」
決して予想外の答えでは無かったがやはりそう言われるとどこか悲しくなる。
「でも一緒にカラオケ行ってたし…なんであの女の人に付き合ってたんだよ?」
「仲良しごっこして俺に心を許したところを狙って殺すんだよ」
そこまで酷いことをするとは思っていなかった。
お互い見ず知らずの者同士ならまだしも一度仲良くしてしまえば殺すなんてできないのが普通だ。
「そんなの…ただあの人を弄んで楽しんだ挙句殺すようなもんじゃないかよ…お前よくそんな最低なことできるな…」
「忘れたか?俺は殺し屋だぞ?そんな心のあること逆に出来るわけないだろうが」
当然とでもいうように薄ら笑いを浮かべながら龍は淡々と述べる。
「そうやって仲良しごっこしてお前も最後には殺されるんだよ」
「…だったら今すぐ殺せよ。仲良しごっこなんかする前に殺せよ。」
「は?」
龍の胸ぐらを掴み早紀ははっきりと言った。
「あの女の人の代わりに今すぐ俺を殺せって言ってんだよ!」
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